1980年代から90年代にかけて、多くのゲーマーを魅了した横スクロールアクションゲーム『夢幻戦士ヴァリス』シリーズ。本記事では、シリーズの原点である『夢幻戦士ヴァリス』から続編『夢幻戦士ヴァリスII』『ヴァリスIII』『ヴァリスIV』、さらにパロディ作品や各種移植版に至るまで、作品ごとの魅力とその進化の歴史を掘り下げていきます。豊富なストーリーや多彩なキャラクター、そして時代ごとの技術的背景も交えて、ヴァリスが築いたレガシーに迫ります。
シリーズの概要

『ヴァリス』シリーズは、1986年に登場した横スクロールアクションゲームで、平凡な女子高生・麻生優子が異世界で「ヴァリスの剣」を受け継ぎ、世界の危機に立ち向かう物語から始まります。シリーズを通じて、夢幻界・暗黒界・人間界を巡る壮大なファンタジー世界が展開され、戦士たちの成長や世代交代、敵との因縁、友情や犠牲といったテーマが深く描かれます。アクション性に加え、ビジュアルシーンやフルボイス、キャラクター切り替えといった演出・システム面でも革新を続け、物語とゲームプレイが高い次元で融合。少女戦士たちが剣と運命に向き合う感動のシリーズです。
シリーズの魅力
少女戦士の成長物語としての奥深さ

『ヴァリス』シリーズの最大の魅力のひとつは、主人公たちが「ごく普通の少女」から「世界を救う戦士」へと成長していく過程にあります。最初に登場する麻生優子は、平凡な女子高生として登場しますが、突如として異世界の戦士に選ばれ、命を懸けた戦いに身を投じることになります。異世界の出来事に対する戸惑い、敵に直面したときの恐怖、仲間の死や裏切りを乗り越えていくその姿は、ただのアクションゲームの主人公ではありません。彼女は、常に葛藤し、悩み、決断を下す「人間」として描かれます。
シリーズを追うごとに、彼女は精神的な成熟を遂げ、ついには神格化されるまでに至ります。また、優子だけでなく、後続作で登場するレナやチャム、ヴァルナといった新たな戦士たちもまた、自分の運命や過去に向き合いながら、自身の中の弱さや怒りを乗り越えていきます。単なる勧善懲悪ではなく、登場人物それぞれの内面的な成長と苦悩を丁寧に描く点は、他のアクションゲームではなかなか見られない深みがあります。
このように、ヴァリスシリーズは、若き少女たちが過酷な運命に立ち向かい、自らの意思で未来を切り開いていくというドラマを中心に据えており、それがプレイヤーの心を強く惹きつける最大の理由と言えるのです。
濃密なファンタジー世界と神話的構造

『ヴァリス』シリーズが放つもう一つの強烈な魅力は、作品全体を貫くファンタジー世界の構築と、神話的な物語構造にあります。夢幻界、暗黒界、人間界という三つの世界が交錯するスケール感のある舞台設定は、どの作品にも共通する根幹であり、それぞれの世界には独自の歴史や秩序が存在します。単なる敵味方の二項対立ではなく、それぞれの世界の住人たちがそれぞれの正義や目的を持って動いており、物語に厚みとリアリティを与えています。
また、登場する剣や装備、魔法の力にも象徴性があり、とくに「ヴァリスの剣」は世界の守護と意志を象徴する存在です。優子の剣は正義の具現である一方、グラメスが持つ「リサスの剣」は闇と破壊の象徴として対を成しており、これらの武器の持つ意味がそのまま物語のテーマを反映しています。
さらに、キャラクターの系譜や血縁の秘密、かつての王家の因縁など、ギリシア神話や北欧神話に通じるような壮大な神話的要素が随所に盛り込まれており、単なるゲームの域を超えた「神話世界の再構築」としても楽しめる仕掛けになっています。
ストーリーとゲーム性の融合が生み出す没入感

ヴァリスシリーズが他のアクションゲームと一線を画している最大の要因は、ストーリーとゲームプレイが密接に結びついている点です。たとえば、ステージの合間に挿入されるビジュアルシーンは、キャラクターの心情を細かく描き、物語の緊張感や深みを高めます。これにより、プレイヤーは単なる敵の撃破ではなく、物語上の目的を持って戦うことになります。敵を倒すこと自体がドラマの一部として組み込まれているのです。
ゲーム中のシステムも、物語と密接にリンクしています。『ヴァリスII』の衣装チェンジは、主人公の内面的な変化や、異なる戦闘スタイルへの適応を表現するものとしても機能していますし、『ヴァリスIII』や『IV』のキャラクター切り替えシステムも、仲間との連携や絆を体感するための仕組みとなっています。物語で絆を深めたキャラを操作して強敵に挑むという流れは、プレイヤーにとって強い共感を呼ぶ体験となります。
また、シリアスなストーリー展開の中で、「自分自身がその戦いに参加している」という臨場感を持たせる工夫が随所に施されており、ゲームと物語が分離せず、ひとつの完成された体験として提示されているのがヴァリスシリーズの大きな特徴です。
時代を先取りした演出と技術的挑戦

ヴァリスシリーズは、そのリリース当時の技術的制約の中で、表現力を極限まで追求していたことでも高く評価されています。PC-8801での初作において既に、ステージ間に挿入されるビジュアルシーンや、ステージごとの変化に富んだ演出が話題を呼びました。特に、アクションゲームでありながらセリフとイラストを使ってストーリーを語る手法は、当時のゲームとしては異例であり、アドベンチャーゲームの要素を大胆に融合した新しい試みでした。
PCエンジンCD-ROM²版ではさらに進化を遂げ、アニメーションによるカットシーンやフルボイス演出、豪華なBGMが導入され、まさに「プレイするアニメ」のような体験を提供しています。CD-ROMという新しいメディアの可能性を積極的に活用し、従来のゲーム機では不可能だった映像と音声の一体感を実現しました。これは、当時のプレイヤーにとってまさに革命的で、後のビジュアルノベルやドラマチックアクションゲームの先駆けとも言える存在です。
また、ゲームシステム面でも時代を先取りした試みが多く見られます。キャラクターの切り替えや特殊能力の導入、装備による戦闘スタイルの変更など、現代のゲームでは当たり前となった要素を、すでに90年代初頭の段階で実装していたという点において、ヴァリスシリーズは革新的なタイトルであったと断言できます。
継承と世代交代が紡ぐ物語の深み

ヴァリスシリーズの物語は、単一の主人公の冒険にとどまらず、世代を超えて継承される「意志」の物語でもあります。シリーズ初期は優子が中心となって展開されますが、『ヴァリスIII』で彼女が使命を終えて昇天し、神の存在となることでその章に幕が下ろされます。しかし、物語は終わりません。『ヴァリスIV』ではレナが新たなヴァリスの担い手として登場し、新たな敵と対峙することになります。
この世代交代の構造がもたらすものは、物語における“時の流れ”です。前作の出来事が新しい世代に影響を及ぼし、過去の戦士たちの行動が次世代に影を落とす。それは単なる後継ではなく、「意志と記憶の継承」であり、戦士たちはいつも前の世代の想いを背負って戦っています。とくに『ヴァリスIV』での優子との再会や、ヴァルナの登場といった過去との接点は、ファンにとって強い感動を呼ぶ瞬間となっています。
また、敵側にも世代間の因縁が存在しており、グラメスやガルキアといった敵もまた「過去の業」を背負って生まれた存在です。善と悪の対立だけではない、歴史と血の連鎖が生む複雑な構造が、物語をより重厚なものにしています。
シリーズを通して語られるのは、「戦う理由とは何か」「力を持つ者の責任とは何か」といった普遍的なテーマであり、それがプレイヤーに深い問いを投げかけ続けるからこそ、このシリーズは今もなお多くのファンに語り継がれているのです。
シリーズの一覧
夢幻戦士ヴァリス

1986年、日本テレネットの社内ブランド「ウルフ・チーム」によって制作された『夢幻戦士ヴァリス』は、横スクロールアクションゲームとしてPC-8801mkIISRを皮切りに登場しました。少女が異世界で剣を手に戦うというテーマは、当時としては斬新かつ異色の設定であり、アクション性とストーリー性の両立により多くのファンを獲得しました。
物語は、ごく普通の女子高生・麻生優子が、ある日突然異世界ヴァニティの女王ヴァリアにより「ヴァリスの戦士」に選ばれるところから始まります。ヴァリスとは、この世界を守護する聖なる剣であり、彼女はこれを受け継ぐ使命を課されることになります。異世界ヴェカンティでは暗黒の支配者ログレスが勢力を伸ばし、世界の均衡が脅かされており、その鍵となるのが「ファンタズム・ジュエリー」と呼ばれる5つの宝石です。優子はその奪還を使命として、戦いの道を歩み始めるのです。
ゲームは全10ステージ構成で、ステージごとにさまざまな敵やギミックが用意されており、剣での攻撃や魔法を駆使して進行していきます。ゲーム進行とともに主人公は「ヴァリススーツ」を纏うようになり、より強大な力を扱えるようになります。アイテムの取得で剣のパワーや防御力が向上し、ステージクリア後にはセーブ機能も搭載されるなど、当時としてはかなり先進的なシステムを備えていました。
また、特筆すべきはビジュアルシーンの存在です。単なるアクションゲームに終わらず、前後のストーリーを挿絵と共に表現する演出は、当時のプレイヤーに大きな衝撃を与えました。前作『ファイナルゾーン』でも使われて好評だったこの演出手法は、ヴァリスの世界観を視覚的に強化し、ゲームをドラマ作品としても成立させました。

物語の終盤では、優子のクラスメートである麗子がログレスの配下として登場。彼女は家庭環境の不遇や優子への嫉妬心からログレスに取り込まれ、敵として立ちはだかります。かつての同級生が剣を交える展開は、単なる善悪の対立に留まらず、感情的な葛藤をも含んだ切ない展開を生み出しました。
最終決戦ではログレスを打ち破ることに成功するも、優子の心には深い悲しみが残ります。失った友、犠牲となった命、そして自身に課せられた重すぎる使命――それでも彼女は立ち上がり、「人の世ある限りヴァリスの力も不滅である」と静かに誓うラストシーンは、多くのプレイヤーに強い印象を残しました。
この作品はその後、多数の機種に移植されることで多くのバリエーションを生みました。PCエンジン版ではフルボイスやアニメーションシーンを取り入れたことで、ドラマ性がさらに強化されています。ファミコン版ではアクションRPG的要素が強くなり、マルチエンディングなど新たな試みも導入されました。
ゲームソフト
ファミコン版

メガドライブ版

PCエンジン版

夢幻戦士ヴァリスII

前作から3年後、1989年に登場した続編『夢幻戦士ヴァリスII』では、優子の新たな戦いが描かれます。ログレスとの戦いから数年、平穏な日々を取り戻したはずの優子の元に、再び夢幻界の危機が迫ります。夢の中で亡き麗子からの警告を受け、彼女は再び剣を手に取り異世界へと向かいます。
今回の敵は、反ログレス派によって解き放たれた「残忍王メガス」。彼はログレスとは異なる危険な存在で、戦いにおいて一切の慈悲を持たない冷徹な支配者です。彼の登場により、夢幻界と暗黒界のバランスは大きく崩れ、かつてヴァリアが維持していた平和は破られてしまいます。
PC版では、ビジュアルシーンの演出がさらに強化され、音声付きのストーリー展開が行われました。また、主人公の衣装を変えることで能力が変化する「着せ替えシステム」が導入され、アクション性だけでなく戦略性も増しています。ビキニアーマーなどの強化装備だけでなく、呪われた衣装も存在し、単なるコスチュームでは終わらない深みがありました。

物語は、優子がヴァリスの力を失い、追い詰められる展開から始まります。囚われたヴァリアを救おうとするも、それが罠だったことが明らかとなり、優子の目の前でヴァリアが命を落としてしまいます。失意に沈む彼女を救うのが、再び登場する麗子の霊体です。麗子は死後もなお優子を見守っており、彼女の力になりたいという願いが形となって現れた存在でした。
優子はヴァリアの愛と麗子の友情によって再び立ち上がり、ヴァリスの力を取り戻します。そして、メガスとの激戦の末に勝利を収めます。メガスは優子と同じく実の親に捨てられた過去を持ち、最後には優子に一抹の共感を示しながら散っていくという複雑なラストを迎えます。
PCエンジン版では、優子が実はヴァリアの実の娘であり、王位継承を避けるために現実界に送られていたという新設定が加わります。この衝撃的な真実は物語に深い重層性をもたらし、優子が単なる「選ばれし戦士」ではなく、「生まれながらの王族」という運命を背負っていたことが明かされるのです。
ゲームとしては、マップの迷路要素が簡略化され、よりシンプルな横スクロール型アクションに変更されています。
ゲームソフト
PCエンジン版

SDヴァリス


1992年2月14日に発売された『SDヴァリス』は、シリーズの中でも異彩を放つセルフパロディ作品で、従来の美少女ヒロイックアクションの世界を“かわいくデフォルメ”したタイトルです。『ヴァリスII』をベースとしながらも、全体のトーンはコミカルかつライトで、キャラクターは全員ちびキャラになり、シリアスな物語はギャグ調に再構成されました。
メガドライブ用に発売された本作は、アクションゲームとしての基本を押さえつつも、ジャンプや攻撃の挙動が愛嬌に満ちた演出で表現されており、シリーズファンには“肩の力を抜いて楽しめる”一作として知られています。また、シリアスだった本編シリーズの流れを一度断ち切るような作品として、ある意味でヴァリスワールドの幅広さを証明した意欲作とも言えるでしょう。
登場キャラクターたちもSD化されたデザインで登場し、プレイヤーは優子を操作しながら、敵とのコミカルなやり取りを繰り広げることになります。敵キャラまで愛嬌たっぷりで、シリーズのシリアスなイメージを良い意味で壊し、パロディの魅力に満ちたユニークなヴァリスです。
ヴァリスIII

『ヴァリスIII』は1990年にPCエンジンCD-ROM²専用ソフトとして発売された作品であり、麻生優子の物語に終止符を打つシリーズの集大成です。前作でログレスを討ち、夢幻界に一時の平和をもたらした優子でしたが、その平穏は長く続きませんでした。新たなる脅威として姿を現したのは、暗黒界の王・グラメス。彼は崩壊しつつある自らの世界から民を救うため、夢幻界と人間界の侵略を開始しようとしていました。グラメスは「リサスの剣」と呼ばれる闇の剣を手にしており、優子が操る「ヴァリスの剣」に匹敵する力を持っていたのです。
この未曾有の危機に対して、優子は再びヴァリスの戦士として剣を取り立ち上がる決意をします。しかし、今作では彼女一人の戦いでは終わりません。彼女のもとに、新たな仲間が二人加わります。ひとりは暗黒界出身の戦士、チャム。彼女はかつてグラメスに父を殺され、その復讐心から優子の敵として登場するも、戦いの中で心を通わせ、やがて信頼できる味方となっていきます。そしてもうひとりは、夢幻界の王女ヴァルナ。彼女は優子の実妹であり、幼い頃に引き離されて以来別々の道を歩んできた存在でした。ヴァルナは魔法の使い手として戦闘に加わり、三人の絆が物語の核心を形作っていきます。

ゲームシステムとしては、シリーズ初の「キャラクター切り替えシステム」が導入されており、プレイヤーは状況に応じて優子、チャム、ヴァルナを自由に切り替えて操作することが可能です。それぞれのキャラクターには独自の武器や魔法があり、優子は剣を用いた攻撃に長け、チャムはムチでの広範囲攻撃、ヴァルナは強力な魔法で敵を殲滅する力を持っています。場面によっては操作キャラクターが限定されるステージや、選んだキャラクターによって異なるビジュアルシーンが展開されるなど、物語とアクションが高いレベルで融合しています。
ストーリーは、グラメスの手によって異世界が危機に瀕していく様子と、それに立ち向かう三人の戦士たちの成長と団結を軸に展開します。道中では、チャムが捕らえられたり、ヴァルナが魔力を封じられるなど、三人がそれぞれ試練を乗り越えながら最終決戦へと向かう過程が丁寧に描かれています。クライマックスでは、かつての敵であるログレスも登場し、グラメスとの共闘という形で再び戦いが繰り広げられます。この一連の戦いの果てに、優子はその使命を全うし、ヴァリスの剣を天に返すことで神格化され、人間界と夢幻界の両方を守護する存在として昇天するという壮大な結末を迎えるのです。チャムとヴァルナは彼女を涙ながらに見送り、ヴァリスの戦いに終止符が打たれます。
『ヴァリスIII』は、アクションゲームとしての完成度も高く評価され、ビジュアルシーンや音楽、キャラクターボイスも含めて当時のCD-ROM²ならではの表現力を活かしたタイトルとなりました。続編『ヴァリスIV』へと繋がるラストでは、世界は新たな時代を迎える兆しを見せながら幕を閉じます。
ゲームソフト
PCエンジン版

メガドライブ版

ヴァリスIV

『ヴァリスIV』は1991年にPCエンジンCD-ROM²用ソフトとして発売され、これまでの主人公である麻生優子に代わって新たな戦士・レナを主人公に据えた新章として登場しました。前作のラストで優子が神となり天界へと昇った後、ヴァリスの剣は世界を見守る象徴となり、夢幻界にも一時の平穏が訪れます。しかし、その静寂は長くは続きませんでした。
古代に封印されたはずの魔幻衆が復活し、夢幻界を蹂躙し始めたのです。魔幻衆を率いるのはガルキアという存在であり、彼はヴァリスの守護を受ける夢幻界に宣戦布告を行い、人間界にもその手を伸ばしていきます。ヴァリスの力を失った世界ではこれに抗う術がなく、夢幻界の女王ヴァルナまでもが捕らえられ、処刑の時を待つ絶望的な状況へと追い込まれていきます。
そんな中で現れたのがレナ・ブラントという若き女性戦士です。彼女はレジスタンスの一員として戦い続けてきた過去を持ち、世界を救う使命を自らの手で果たそうと誓います。旅には、双子の妹であるアムと、謎多き戦士アスファーが同行し、三人はヴァリスの力を取り戻すための旅に出発します。アスファーは実はガルキアの父であり、息子の暴走を止めたいと願う過去を持つ人物であり、物語は単なる正義対悪の構図ではない複雑な人間模様を描きます。

ゲームシステムとしては前作のキャラクター切り替えシステムがさらに進化しており、レナはスライディング、アムは二段ジャンプ、アスファーは特定の攻撃を無効化できるといった固有能力を持ち、それぞれの特性を活かしてステージ攻略を行うことになります。魔法や装備の強化要素もあり、各キャラクターのスキルを駆使する戦略性が高く評価されました。
ビジュアル面でも、CD-ROM²の特性を活かしたフルボイスのアニメーションや、臨場感あふれるサウンドトラックが導入され、当時の家庭用ゲームとしては破格の演出が実現されていました。物語は三人の絆を中心に展開され、天界へ赴いたレナたちは優子と再会します。そこでヴァリスの剣を受け継ぎ、地上へと戻って最終決戦へと挑むのです。
ガルキアは、力を欲しすぎたがゆえに自らの制御を失った哀しき存在として描かれ、ただの悪役ではない深みを持ったキャラクターとして物語に厚みを加えています。最終的にレナたちはヴァリスの力によってガルキアを討ち倒し、世界にはようやく真の平和が訪れることとなります。
この『ヴァリスIV』により、初代から続いてきた夢幻界の戦いは一つの大きな区切りを迎えました。主人公を交代しながらも、ヴァリスという存在が受け継がれ、戦士たちの意志が時代を超えて繋がっていくというテーマは、プレイヤーに深い感動を与えました。シリーズの完成度としては、演出、システム、ストーリーのいずれもが高いレベルに到達しており、まさに「ヴァリス神話」の締めくくりにふさわしい作品となっています。
ゲームソフト
PCエンジン版

SUPERヴァリス 赤き月の乙女


1992年3月27日に発売された『SUPERヴァリス 赤き月の乙女』は、『ヴァリスIV』をスーパーファミコン向けにアレンジ移植した作品です。ただし、単なる移植ではなく、キャラクター構成・ステージ構造・システムの一部が大きく変更されており、事実上「別作品」として捉えられるほど内容に違いがあります。
原作『ヴァリスIV』においてはレナ、アム、アスファーの3人のキャラクターを切り替えて操作する形式でしたが、スーパーファミコン版ではレナ単独で戦うスタイルに変更されています。また、アクション性を高めるためにアイテム制や武器切り替えシステムなどが採用され、魔法のチャージ制などは削除されました。ボイス付きアニメーションやカットシーンのほとんども削除され、カートリッジ容量に合わせた仕様変更が施されています。
ストーリーは、魔幻衆の王・ガルギアが赤い月と共に現れ、夢幻界に侵略を開始するところから始まります。ヴァリスの剣を手にした少女レナが、レジスタンス最強の戦士として、ヴァルハラや空中庭園などを舞台に、7つの多彩なステージを駆け巡りながらガルギアに挑みます。
難易度設定に応じて敵の動きや攻撃パターンが変化するなど、繰り返しプレイに耐える設計がなされており、当時のアクションゲームとしては遊びごたえのある仕上がりとなっています。
関連作品
ヴァリスX

『ヴァリスX』(ヴァリスクロス)は、2006年に発売された18禁アドベンチャーゲームであり、『夢幻戦士ヴァリス』シリーズとは大きく趣を異にする異端作です。本作は、シリーズの第1作・第2作をベースに、凌辱を中心とした過激な性的描写を全面に据えた完全なるアダルトリメイクであり、ファンの間では“黒歴史”として語られることが多い作品です。
アクション性は一切廃され、ゲームは選択肢を含むノベル型のADV形式で進行します。主人公の優子は、親友の麗子と共に異世界に召喚され、そこで待っていたのはおぞましい陵辱と暴力に満ちた暗黒界の魔王ログレスの手による過酷な運命でした。物語中では、従来のキャラクター、ヴァルナ、チャム、ヴァリアなども登場しますが、その設定や性格、役割は本編シリーズから大きく逸脱しています。
「優子がログレスに従属して世界を侵略する」「ヴァリスの力を吸収されて廃人化する」「麗子との同性愛的な感情に目覚める」など、エンディングはすべてバッドエンドに近く、ファンに衝撃を与えました。シリーズ原作に敬意を払ったオマージュもある一方で、それらを陵辱的に消費しているという批判が強く、シリーズ初期の関係者やファンからは非難の声が上がり、不買運動にも発展しました。
また、開発元であるイーアンツおよび日本テレネット自体も経営悪化から2007年に倒産。『ヴァリスX』は「テレネット最末期の迷走の象徴」として、ゲーム史における非常に特異な位置に残る作品となりました。
まとめ

ヴァリスシリーズは、単なるアクションゲームではなく、重厚なストーリーと感情的なドラマを兼ね備えた稀有な作品群です。優子をはじめとする戦士たちの葛藤と成長、異世界の運命に翻弄されながらもそれを受け入れる勇気、そして友情や愛情が織り成す物語は、多くのファンに深い感動を与え続けてきました。技術面でも常にその時代の最先端を追求し、演出やシステムにおいて他の追随を許さない革新性を誇っていました。
時代が変わっても、「人の世ある限り、ヴァリスの力もまた不滅である」その言葉通り、今なお語り継がれる名作シリーズとして、ゲーム史に確かな足跡を残しています。
ヴァリスシリーズの一覧
