1994年12月9日、エニックスから誕生したスーパーファミコン用ゲーム「ワンダープロジェクトJ 機械の少年ピーノ」。開発はアルマニック、プロデューサーは藤本広貴、ディレクターおよびゲーム・デザイン、脚本は米田喬、キャラクター・デザインは川元利弘、音楽は森彰彦が手がけました。このゲームは育成シミュレーションゲームであり、プレイヤーはロボットであるティンカーを操り、ギジンであるピーノに指示を出して、無実の罪により囚われたジェペット博士を救出することが目的です。特徴的なのは、プレイヤーの指示がピーノのパラメーターや行動パターンに影響し、ピーノを成長させることが醍醐味となっています。
シリーズの広がり
「ワンダープロジェクトJ 機械の少年ピーノ」の成功を受け、1996年にはNINTENDO64用ソフト『ワンダープロジェクトJ2 コルロの森のジョゼット』が発売。これにより、「ワンダープロジェクトJシリーズ」が誕生しました。なお、シリーズは2008年に行われた「たのみこむの復活して欲しいレトロゲーム」で1位に選ばれるなど、根強いファンの支持を受けています。
システム
プレイヤーは妖精のような姿のロボット・ティンカーを操作し、ピーノに様々な行動を教え込みます。ピーノの成長はイベントにて発揮され、そのためには様々なアクションを行うことが求められます。体力値と気力値の管理も重要で、これらが低くなるとピーノは危険なモーションを取り、最終的には故障してしまいます。修理には費用がかかり、逆にお金が足りない場合はゲームオーバーとなります。
画面構成と操作感
サイドビューの画面構成で、プレイヤーはカーソルを動かし、画面中のオブジェクトに触れることでゲームを進めます。この操作感が新鮮で、従来のボタン入力方式とは異なる魅力を提供しています。また、戦闘は自動進行で、ピーノの能力と運次第で勝敗が決まります。
開発の背景
ゲームの企画は、ディレクターの平野がMacintosh用ソフトウェアの製作に携わっていた頃に友人が遊んでいたゲームを見て考案されました。当初は1匹の生物を育てるシミュレーションゲームの企画でしたが、エニックスが斬新なゲームを求めていたことから、アイデアの再考が行われました。最終的に、「ペットとのコミュニケーション」をテーマに、ピノッキオを題材とした「ジェペットの息子」が生まれました。ゲームの面白さを伝えるために130ページに及ぶ企画書が作成され、プレイヤーが絵コンテを通じて遊び方を理解できるように工夫されました。
ストーリー
物語は、コルロ島が50年前の戦争で荒廃し、その復興のために作られたギジンが登場したことから始まります。初めは人間とギジンが協力して島を再建することで、緑豊かなコルロ島が復活しました。しかし、次第に人間たちはギジンに対して敵意を抱くようになり、迫害が始まります。
ギジンを生み出したジェペット博士は、この状況を解消するために人間そっくりなギジン「ピーノ」を作り上げます。しかし、ジェペット博士はピーノ完成後に無実の罪で連行されてしまいます。ここで、プレイヤーが登場。ティンカーとともにピーノを目覚めさせ、ジェペット博士の救出を試みるのです。
物語は様々な人物との出会いや冒険を通じて進み、ピーノが成長していく様子が描かれます。エンディングには3つのパターンが存在し、プレイヤーの選択や育成によって結末が変わります。
エンディングパターン
- 1周目のエンディングでは、ジェペット博士の手によってピーノは修復され、コルロ島に平和な共存の未来が訪れる。
- 2周目で評価が完璧でない場合は、王女からのプロポーズの手紙が届き、コルロ島にギジンの王子が誕生する。
- 2周目で完璧な評価の場合は、ピーノは島を守るために犠牲となり、その後の5年後に新たな展開が待っている。
登場人物
ピーノ
ピーノは人間に似た姿を持つギジンで、プレイヤーが操作する主人公です。彼の正体はギジン4649型で、12、13歳の少年のようなイメージがあります。ピーノの成長や性格はプレイヤーの育成方針によって変化し、物語の進行やエンディングに影響を与えます。ピーノは様々な行動をとり、天真爛漫で明るい性格を持っています。彼が経験する冒険や出会い、そして最終的な犠牲は物語に感動と深みを与えます。
ティンカー
プレイヤーがピーノに指示を与えるためのインターフェイスロボット。ティンカーは几帳面で生真面目な性格を持ち、プレイヤーがピーノの冒険を導く重要な存在です。ティンカーとプレイヤーはジェペット博士の救出という共通の目標のもと、冒険を進めていきます。
その他の登場人物
- プレイヤー: テレビの前やこの記事を見ているあなた。ピーノの成長と冒険を支える存在。
- ジェペット・ラマルク: ギジンを創り出した科学者で、ピーノの生みの親。
- 46号: ピーノの友人で相談相手。ギジン4600型。ストーリー終盤で憎む人々に破壊される。
- ファム・ウィザード: 野菜と動物を愛する老人。『J2』での正体が竜人族の生き残りであることが判明。
- ミミ・アンジェライト: ギジン専用の店を営む女性。高い歌唱力を持つ。
- コルロ3世: コルロ島の国王。厳格だが娘に対しては甘い。
- ティファニー王女: コルロ3世の娘で、ピーノに興味を持つ16歳の少女。
- メッサラ: コルロ国の宰相で、ギジン差別主義者。ジェペットが作り出したギジン4646型。
ピーノのステータス
ピーノのステータスは攻撃性、運動性、知性、感受性の4つの項目に分かれています。これらのステータスは成長させる行動によって変化し、ピーノの性格や行動に影響を与えます。特に運動性は多くのイベントで必要であり、ゲーム進行において非常に重要です。
攻撃性
攻撃性はピーノの短気で乱暴な性格に影響します。こうげき力とぼうぎょ力があり、これらは武器の使用や敵の攻撃を受けることで向上します。
運動性
ピーノの体育会系の性格を表すステータスで、うでの力、あしの力、バランスの3つの能力値があります。これらは物を振ったり蹴ったりする行動に必要で、特に運動性は多くのイベントで要求されます。
知性
知性が高いとピーノは知的な優等生となります。しこう力とそうぞう力があり、本を読んだり百科事典を読むことで向上します。
感受性
感受性が高いとピーノは変わった行動をとりやすくなります。かんじる力、ひょうげん力、やさしさの3つの能力値があり、これらは異なる行動に対する感受性を示します。
その他
ピーノの性格に直接影響しないが、重要なパラメーターも存在します。じしんはピーノの自信を示し、まじめさやコンキはピーノの真面目さや根気強さを表します。しんらいはプレイヤーへの信頼度で、うんはピーノの運勢を示します。ストレス、たい力、き力はエネルギー関連のパラメーターで、これらが低いとピーノは故障してしまいます。
シリーズの一覧
ワンダープロジェクトJ 機械の少年ピーノ
スーパーファミコン用ソフトとして発売された育成シミュレーションゲーム。ロボットであるティンカーを操作し、ギジンであるピーノに指示を出して無実の罪により囚われたジェペット博士を救出する事が目的となる。基本的にピーノは自分では操作が出来ず、ある程度の指示を与えることでゲームを進行させる。プレイヤーの指示によりピーノのパラメータや行動パターンが変化していく事が特徴。
ワンダープロジェクトJ2 コルロの森のジョゼット
ニンテンドウ64(NINTENDO64)用ソフトとして発売された育成シミュレーションゲーム。『ワンダープロジェクトJ』の続編。キャラクターデザインは、ジブリなどで活躍するアニメーターの山下明彦。プレイヤーは鳥型インターフェイスロボ・バードを操作し、ギジン「ジョゼット」に何かの道具を提示し、行動を見てその使い方が正しい・正しくないと指示することで育成していく。
まとめ
「ワンダープロジェクトJ」シリーズの魅力は、単なるゲームプレイ以上に、キャラクターたちとの感動的なストーリーとの融合にあります。プレイヤーはキャラクターの成長に共感し、物語の結末がプレイヤー自身の行動によって左右されるため、ゲームへの高い没入感を味わうことができます。
このシリーズは、エニックスの斬新な発想と丁寧な開発の結晶であり、ゲーム史に名を刻む優れた作品となりました。多くのゲーマーにとって忘れられない思い出となり、今もなお多くのファンに愛されています。