【トライアングル・アゲインシリーズ】音楽が導く少女の成長物語

ゲームシリーズ
© 2003 キキ All Rights Reserved.

『トライアングル・アゲイン』シリーズは、音楽と人間ドラマを融合させたアドベンチャーゲームです。全編アニメーションで描かれ、主人公・蓼科灯が音楽の才能を通して成長し、自分の生き方を見つけていく姿を描きます。音楽と心情が連動する独自の演出が魅力の作品です。

シリーズの概要

シリーズの概要
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『トライアングル・アゲイン』シリーズは、音楽をテーマにしたアドベンチャーゲームで、主人公・蓼科灯の成長と芸能界での歩みを描いた二部作です。開発はキキ、アニメーション制作はビィートレインとビーエーワークスが担当し、全編アニメーションという贅沢な演出で物語が展開します。第1作では、音楽家の父を持つ引っ込み思案な少女・灯が偶然の出来事をきっかけに歌手としてデビューするまでを描き、音と心情の変化によって物語が進む独自のシステムを採用しました。続編『トライアングル・アゲイン2』では、デビュー後の灯が音楽業界で成長し、プロデューサー桐生勝との恋愛を通して自分の音を確立していく姿が描かれます。音楽と映像が密接に結びついた構成、丁寧な人間ドラマ、そして心情を映す楽曲表現が特徴の、音楽と物語が融合した意欲的なシリーズです。

シリーズの魅力

「音楽」を物語の中心に据えた新しいアドベンチャー体験

「音楽」を物語の中心に据えた新しいアドベンチャー体験
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『トライアングル・アゲイン』シリーズ最大の特徴は、音楽そのものが物語の中核に位置づけられている点にあります。一般的なアドベンチャーゲームがテキストや選択肢でストーリーを進行させるのに対し、このシリーズでは「音」と「感情の変化」が物語を形づくります。プレイヤーが選ぶ選択肢だけでなく、キャラクターの心の揺れや音の聞き分けといった感覚的な要素によって物語や楽曲が変化する仕組みが導入されており、音楽とドラマが一体化した体験が可能になっています。主人公・蓼科灯が持つ音楽的才能を、単なる設定としてではなく、プレイヤーの行動を通して体感させる演出は、当時としては非常に斬新でした。特に劇中に登場する複数の楽曲が、シーンごとの心情やストーリーの転換点を象徴する役割を持っており、音楽が台詞以上に感情を伝える媒体として機能しています。アドベンチャーという枠を超えて、音楽表現を軸にした物語構成は、プレイヤーに深い印象を残す要素となりました。

成長と自己発見を描く主人公・蓼科灯の物語

成長と自己発見を描く主人公・蓼科灯の物語
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シリーズの中心にいる蓼科灯は、ただの“歌手を目指す少女”ではなく、自己表現と成長を象徴する存在として描かれています。彼女は父の失踪という過去を抱えながらも、自分の中に眠る音楽の才能を通じて新たな自分を見つけていきます。最初は内気で自信のない少女が、オーディションをきっかけに音楽の世界へと足を踏み入れ、やがて自らの意志で歌う意味を見出していく。その過程は、夢を追う者なら誰もが共感できるリアルな成長物語です。続編では、彼女が芸能界の荒波の中で迷いながらも、仲間や恋人の支えを受けて自分の信じる音を貫こうとする姿が描かれます。音楽という才能を「運命」ではなく「選択」として扱う構成が特徴的であり、彼女が一歩ずつ自分の足で進んでいく様子は、単なるアイドルサクセスストーリーではなく、ひとりの人間の内面的な成長譚として完成しています。その変化を繊細なアニメーションと音楽で表現する手法が、シリーズ全体を通して一貫しており、プレイヤーの心を静かに揺さぶります。

アニメーションとゲームの融合による映像表現の完成度

アニメーションとゲームの融合による映像表現の完成度
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本シリーズは、全編にわたってアニメーションで物語が進行するという大胆な構成を採用しています。実質的には「デジタルアニメ」とも呼べる内容で、当時のコンシューマーゲームとしては非常に贅沢な演出でした。アニメーション制作を担当したのは、ビィートレインとビーエーワークスといった実績あるスタジオであり、登場人物の動きや表情が滑らかに描かれています。ゲーム中のほぼすべてのシーンが映像で構成されているため、プレイヤーはテキストを読むだけではなく、キャラクターたちの表情や動作から感情を読み取ることができます。この演出手法により、プレイヤーはまるで一本のテレビアニメを見ているような臨場感を得られるのです。また、アニメと選択肢によるインタラクションが自然に組み合わされているため、映像作品とゲームの境界線が曖昧になる独特の没入感を生み出しています。特に、音楽シーンでのライブ演出や、感情が高まる場面での作画の動きは、当時のゲーム技術の限界を超えた試みとして高く評価されました。

「やるドラ」系アドベンチャーの進化形としての魅力

「やるドラ」系アドベンチャーの進化形としての魅力
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『トライアングル・アゲイン』シリーズは、プレイヤーが選択肢によって物語の流れを変える「やるドラ」系アドベンチャーの流れを汲んでいますが、その中でも特に「音楽」と「心情の変化」を軸に据えた点で独自性を持っています。従来のアドベンチャーがテキストの分岐や恋愛要素を中心に構築されていたのに対し、本作はキャラクターの心理的成長や芸能界という社会的背景を丁寧に描写し、リアルな人間ドラマとしての完成度を高めています。続編『トライアングル・アゲイン2』では恋愛要素も加わり、音楽業界の裏側や人間関係の複雑さがより深く掘り下げられています。これにより、シリーズ全体が単なる「美少女アドベンチャー」ではなく、「人生と夢の選択」を描く群像劇としての側面を持つようになりました。また、物語のテンポや選択肢の構成にも工夫があり、プレイヤーの行動が灯の人生の分岐点となる構造がゲーム体験に一層の重みを加えています。アニメのようでありながら、プレイヤーの意志が反映されるドラマという形式は、まさにやるドラ系の進化形といえるでしょう。

豪華スタッフと音楽演出が生む独特の世界観

豪華スタッフと音楽演出が生む独特の世界観
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このシリーズを支えているのは、ゲーム・アニメ・音楽の各分野から集結した豪華な制作陣です。キャラクターデザインを担当した樋口香里による繊細で温かみのあるビジュアルは、登場人物たちの個性を際立たせ、ストーリーに深みを与えています。シナリオライター陣には、東郷光宏や堀井明子、高岡広明、川口貴文といった複数の作家が参加しており、それぞれのエピソードが独自の感情表現を持ちながらも、全体として調和した物語世界を築き上げています。音楽面では、劇中で使用される複数の楽曲が物語と密接にリンクしており、歌そのものが登場人物の感情を代弁する形で展開されます。歌詞の内容やメロディがシーンに合わせて変化することで、プレイヤーは音楽そのものを「ストーリーの言葉」として感じ取ることができます。また、主人公の声優・今井由香と歌唱担当の山崎麻衣美(またはYUKA)による演技と歌唱の切り替えも見事で、キャラクターの繊細な心の動きを表現しています。これらすべてが融合することで、他のアドベンチャーゲームにはない独特の情緒と世界観が完成しているのです。

シリーズの一覧

トライアングル・アゲイン

トライアングル・アゲイン
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『トライアングル・アゲイン』は、2002年にXboxで発売され、翌年にはPlayStation2にも移植されたミュージック・アドベンチャーゲームです。開発・発売はキキが担当し、アニメ制作にはビィートレインとビーエーワークスが関わっています。キャラクターデザインは樋口香里、シナリオは複数のライターが手がけ、主人公を含む全キャラクターがフルボイスで演じられています。ジャンルとしてはコマンド選択式アドベンチャーで、時折現れる選択肢によって物語がわずかに分岐する形式です。

トライアングル・アゲイン
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物語の主人公は、音楽の才能を持つ少女・蓼科灯(たてしなあかり)。幼い頃から音楽家の父のもとで英才教育を受けていたものの、父の失踪をきっかけに平凡な女子高生として暮らしていました。ところが、友人のオーディションに付き添った際に偶然バイオリン演奏を披露したことから、灯の才能が注目を浴び、思いがけず歌手デビューの話が舞い込んできます。彼女は迷いながらも、自分を変えたいという気持ちと父への想いから、そのチャンスを受け入れることを決意します。

ゲームはアニメーションをふんだんに使用し、まるで一話分のアニメを見るような感覚で物語が展開します。しかし、全体のボリュームは短く、デビューの瞬間でエンディングを迎える構成です。デビュー曲は3種類あり、それぞれが大・中・小ヒットの結果を持つため、エンディングは計9種類存在します。ただし展開は大きく変化せず、主に成果の違いとして描かれています。

トライアングル・アゲイン
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作品の大きな特徴は、音楽が物語の中心に据えられている点です。主人公の歌やライバルの楽曲が劇中に多く登場し、制作陣もこの部分に力を注いだことが伺えます。しかし、音楽表現という題材の難しさから、劇中で「天才的」とされる歌がプレイヤーの耳には平凡に感じられるという課題もありました。さらに、スキップ機能や選択肢直前のセーブができないなど、プレイ面での不便さも指摘されています。

全体的に、本作は“序章”のような内容で、灯がデビューを果たすまでの過程を描くことに重点が置かれています。恋愛要素はなく、主人公の内面成長を中心に物語が進むため、派手な展開よりも淡々としたドラマが続く印象です。この作品は続編『トライアングル・アゲイン2』へと物語が直結しており、そこでようやく物語の完結を迎えます。

ゲームソフト

Xbox版
トライアングル・アゲイン|Xbox|キキ|レトロゲームから最新ゲームまで検索できるゲームカタログのピコピコ大百科
『ダブルキャスト』や『スキャンダル』など、「やるドラ」シリーズをプロデュースした東郷光宏が手がけたアドベンチャーゲーム。ゲームはアニメーションを見ているかのように進行していく。途中に出てくる選択肢の中からひとつを選んでいきながら物語を楽し…
プレイステーション2版
駿河屋 -トライアングル・アゲイン(プレイステーション2)
プレイステーション2(Playstation2)用ソフト

トライアングル・アゲイン2

トライアングル・アゲイン2
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2002年末にXbox版が、2003年にはPlayStation2版が発売された『トライアングル・アゲイン2』は、前作で始まった蓼科灯の物語の完結編です。音楽業界を舞台に、歌手として成長していく灯の姿がより深く描かれ、前作で提示された人間関係や音楽のテーマが本作で収束していきます。

トライアングル・アゲイン2
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物語の中心には、行方不明となっているシンガーソングライター・桐生勝と、彼の幼なじみ・御堂香澄の存在があります。前作でデビューした灯は、プロデューサーとして登場する桐生勝との出会いによって、音楽だけでなく人間としても大きく成長していきます。本作では恋愛要素も取り入れられ、桐生勝との関係が物語の鍵となります。選択肢の取り方によってエンディングが分岐し、灯の芸能活動の行方と恋の結末がプレイヤーの選択に委ねられます。

前作では短さが目立ちましたが、今作では物語がより丁寧に展開され、キャラクターたちの心情描写も増えています。歌手としての灯の活動、ライバルとの関係、そして業界の中での葛藤がリアルに描かれ、前作で不足していたドラマ性が補われました。また、音楽の演出もさらに強化され、劇中歌やキャラクターソングが物語に深く絡みます。プレイヤーは灯の成長とともに、音楽を通じた人間関係の変化を体験できる構成になっています。

トライアングル・アゲイン2
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この作品では、バックバンドの青年・間島和士や、別の男性キャラクターとの関係も描かれますが、メインはあくまで桐生勝との運命的なつながりです。彼との恋愛エンディングは、本作におけるベストエンドとして位置づけられています。ゲーム全体としてはやるドラ(やるドラマチックアドベンチャー)シリーズに近い形式で、アニメーションと選択肢で進行するアドベンチャーゲームです。

ゲームソフト

Xbox版
トライアングル・アゲイン2|Xbox|キキ|レトロゲームから最新ゲームまで検索できるゲームカタログのピコピコ大百科
キキより2002年12月19日にXbox用ソフトとして発売されたアドベンチャーゲーム。「トライアングル・アゲイン」の続編で、歌手としてデビューした主人公が、才能を開花させ頂点を目指していく作品となっている。物語の途中でプレイヤーが選択する…
プレイステーション2版
駿河屋 -トライアングル・アゲイン2(プレイステーション2)
プレイステーション2(Playstation2)用ソフト

まとめ

まとめ
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『トライアングル・アゲイン』シリーズは、音楽をテーマにしたアドベンチャーゲームとして、独自の試みを多く取り入れた作品です。前作では少女が歌手としてデビューするまでの序章を描き、続編ではその成功の裏にある人間関係や恋愛、そして成長の物語を完結させました。どちらの作品も華やかな芸能界を舞台にしながらも、主人公・蓼科灯の内面の変化と、音楽を通じた自己表現の物語を中心に据えています。

ゲームとしての完成度は賛否あるものの、全編アニメーションという豪華な演出や、当時としては珍しい音楽連動型の物語構成は注目に値します。売上面では大きな成功を収められなかったものの、“音楽で心を描く”というテーマに挑戦した意欲的なシリーズとして、今も記憶に残る作品です。

トライアングル・アゲインシリーズの一覧

ゲーム一覧|トライアングル・アゲイン|レトロゲームから最新ゲームまで検索できるゲームカタログのピコピコ大百科
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