この記事では、フライト・プランが制作したシミュレーションRPG『ブラックマトリクス(BLACK/MATRIX)』シリーズについて詳しく紹介します。本シリーズの重厚な物語や独自のシステム、個性豊かな登場人物にスポットを当て、どのようにダークファンタジーの世界観を築き上げてきたのかを順を追って解説していきます。
シリーズの概要

「ブラックマトリクス」シリーズは、フライト・プランが開発しNECインターチャネルが発売したシミュレーションRPGです。天使と悪魔、そして人間が存在する退廃的な世界観が特徴で、善悪の価値観が逆転した独特の倫理体系が物語に深い影を落とします。プレイヤーは背中に羽を持つ登場人物たちの運命を操作しながら、血や犠牲を代償に進む重厚なドラマを体験します。作品ごとに独立したストーリーが展開され、複雑な分岐や多彩なエンディングが用意されています。緊張感あふれる戦闘システムと魅力的なキャラクター描写、重層的な演出が高い評価を受けています。
シリーズの魅力
善悪が反転した世界観の深遠さ

「ブラックマトリクス」シリーズ最大の魅力は、現実世界の常識とは真逆の倫理観が徹底して貫かれた世界設定にあります。この世界では、「愛」「自由」「平等」「正義」「友情」「人権」「弱者」など、現代社会で当たり前に美徳とされる価値観は、全て「七つの大罪」とされ、徹底的に罪として追及されます。一方で「嫉妬」「傲慢」「憤怒」「怠惰」「強欲」「暴食」「欲情」が「七つの美徳」とされ、社会の秩序を支える価値として認められているのです。
プレイヤーは、白い羽を持つ者が「罪人」とされ、黒い羽を持つ者が支配者という、絶望的に歪んだ社会に生きる登場人物たちの運命を操作します。その理不尽さと残酷さは、単なる暗黒世界を描くにとどまらず、「正しさとは何か」「善悪とはどこに線を引くのか」という深い哲学的テーマを突きつけます。プレイヤーは物語を進めるたびに、この倒錯した秩序にどう向き合うのか、自分なりの答えを探すことを強いられ、没入感は極めて強力です。
また、善悪の逆転設定は、キャラクターたちの動機と行動を多層的に描くうえで重要な役割を果たしています。敵と味方の立場が決して単純ではなく、対立する陣営同士が互いに抱える理想や苦悩を理解する余地があるため、どの結末に辿り着いても単なる勝利や敗北では終わらない余韻が残ります。
複雑で重厚なキャラクタードラマ

シリーズを通じて、プレイヤーが操作する主人公たちは、単なる正義のヒーローではなく、自らの罪や弱さを背負った人間です。特に初代「BLACK/MATRIX」の主人公アベルは、愛を理由に異端者となり、大罪人として過酷な運命を歩むことになります。彼が仲間たちと旅を続ける中で、それぞれのキャラクターもまた「罪」を抱えています。七つの大罪を象徴する仲間たちは、自由を求めて主を殺めた者や、正義のために人を裁いてきた者、弱さを克服できないまま虐げられてきた者など、多様な苦悩を共有しています。
この群像劇の中で、互いに影響を与え、時に対立し、時に支え合う関係性が繊細に描かれます。選択によって仲間が死亡することもあれば、救うこともできるため、プレイヤー自身の行動がキャラクターの運命を大きく左右します。戦闘やイベントの勝敗だけでなく、言葉の選び方や進む道筋で絆が深まることもあれば、修復不能な亀裂が入ることもあるため、一人ひとりの存在感が強烈です。
「BLACK/MATRIX 2」では、魔王の弟レイジが記憶を失った状態から物語が始まりますが、記憶を失う前の彼は冷酷な悪魔であり、現在の優しさとの対比が物語の切なさを増幅させています。また、ギルヴァイスやヴィディアといった彼を支える仲間たちも、ただのサポート役ではなく、それぞれが自分だけの想いや執着、迷いを抱えており、どのキャラクターも単なる「駒」ではありません。
この徹底したキャラクター造形の深さが、本作の物語をより重厚にしています。
独創的な戦闘システムと緊張感

「ブラックマトリクス」シリーズの戦闘は、単なるターン制シミュレーションに留まりません。敵を倒したときに獲得できるBP(Blood Point)をどう管理するかが攻略の要です。BPは魔法を発動するためのリソースでもあり、武器に潜在能力を宿すための燃料でもあります。戦闘前にどの潜在能力を解放するか、戦闘中にBPをどのタイミングで補給するか、全ての選択が勝敗に直結します。
一方で、BPを使い切ると魔法が使えなくなり、非常に不利な状況に追い込まれます。特に、倒れた仲間が「追撃」を受けると即座に白骨化し、二度と戦列に戻せない厳しさがシリーズの特徴です。ストーリー上の重要人物でさえ、戦闘の結果で退場してしまう可能性があるため、一手一手に重大な意味が生じます。
「BLACK/MATRIX 2」では、敏捷性に応じた行動順や、側面・背面からの攻撃でダメージが増加するシステムが導入され、戦略性がさらに拡張されました。どの方向から攻撃するか、どのタイミングで回復するかなど、プレイヤーの戦術眼が試されます。
また「BLACK/MATRIX ZERO」では、BPを戦闘後にも引き継げる仕組みがあり、1戦だけの視点ではなく、長期的な資源管理も必要になります。さらに「ペインリング」や「ペインキラー」といった、発動中に特別な能力を引き出す複雑なシステムも登場し、説明書だけでは理解が追いつかない奥深さがあります。この徹底的に尖ったゲームデザインが、シリーズに独特の緊張感を生んでいます。
分岐とマルチエンディングの重み

本シリーズは、プレイヤーの選択で物語が大きく変化するマルチエンディング方式を採用しています。「BLACK/MATRIX」では最初に選ぶご主人様によって展開が異なり、仲間になるキャラクターや終盤のストーリー、さらにはエンディングまでもが劇的に分岐します。選択したご主人様以外の候補が敵として立ちふさがることもあり、一つのルートだけでは物語の全貌を把握することができません。
「BLACK/MATRIX 2」では、さらにルート分岐が複雑化しました。物語の進行に応じてヒロインルートが決まり、それぞれ専用のエンディングが用意されています。中にはバッドエンドや、感動的な別れを迎えるルートも存在し、どの選択が正しかったのか簡単に答えが出せない余韻を残します。特定の条件を満たすことでのみ到達できる隠しエンディングや、強大な隠しボスの撃破によって開示される真相など、やりこみ要素も豊富です。
「BLACK/MATRIX OO」では、通常エンディングが4種類、加えて2周目で解放される特別エンディングなど、周回前提の作りになっており、全ての結末を知るには何度も遊ぶ必要があります。これらの多層的なシナリオ分岐は、プレイヤーが積み重ねた選択を丁寧に肯定する設計であり、物語体験の深さを極限まで高めています。
音楽・ビジュアル・演出の総合芸術性

シリーズは視覚と聴覚の演出面にも妥協がありません。初代「BLACK/MATRIX」では、つちやきょうこの繊細で透明感あるキャラクターデザインが退廃的な世界観と絶妙にマッチしています。ドリームキャスト版ではそえたかずひろの新たなビジュアルが導入され、さらにアニメーションカットシーンを多用し、物語の演出を大幅に強化しました。登場人物たちが苦悩を語る表情や仕草は、テキストだけでは伝わらない生々しい臨場感を生み出しています。
音楽もまた、物語の空気感を支える重要な要素です。切なく重厚なBGMは戦闘の緊張感を盛り上げ、静かな場面では不安や孤独を際立たせます。エンディングテーマが響く瞬間は、プレイヤーが辿ってきた物語の重みを痛感させる演出が施されています。
さらに「BLACK/MATRIX 2」では戦闘が3D表現に進化し、臨場感が格段に増しました。戦いの迫力はもちろん、カメラアングルの工夫で一層の没入感が演出され、キャラクターたちの一挙手一投足が物語の延長として感じられます。この緻密な映像表現と音響効果は、他のシミュレーションRPGにはない「総合芸術性」といえるほどの完成度を誇ります。
シリーズの一覧
ブラックマトリクス(BLACK/MATRIX)

シリーズの幕開けを飾る『BLACK/MATRIX』は、1998年にセガサターン向けに初登場しました。発売前から完全予約限定生産であったため、発売後は入手困難になり、流通数の少なさも相まって中古市場で高額で取引されるほどの話題作となります。物語の舞台は、白い羽根を持つ者が被支配階級とされ、「愛」「自由」「平等」といった現代社会で称えられる価値観が罪悪視される世界です。主人公は白い羽根の青年アベル。記憶を失った状態で目覚め、自分を「愛している」と告げる黒い羽根のヒロインと共に平穏な日々を過ごしますが、その愛が「大罪」と見なされ、彼女は異端審問官によって連れ去られます。主人公は奪われた彼女を救うため、仲間と共に戦いの旅へ出ます。
本作では、ゲーム開始時に複数のヒロインから一人を「ご主人様」として選択する独特のシステムが特徴的でした。選ばなかったヒロインたちは、セガサターン版では登場しないものの、後に発売されたドリームキャスト版やプレイステーション版ではストーリーに関わるキャラクターとして登場し、味方や敵として主人公に関わるようになります。戦闘システムは『サモンナイト』に近いマップ制の戦略バトルを採用しており、特徴として倒れた仲間はその場に残りますが、追撃を受けると白骨化して二度と蘇らなくなる緊張感がありました。

リメイク版であるドリームキャスト版『BLACK/MATRIX AD』では、キャラクターデザインが一新され、イベントシーンにアニメーションやビジュアル演出が加わるなど、より物語性を重視した作りへ進化します。終盤に新しいイベントが加筆されたほか、マルチエンディングシステムが導入され、プレイヤーの選択で結末が変わる展開が楽しめます。一方、プレイステーション版『BLACK/MATRIX+』は、ドリームキャスト版の物語をベースにしつつ、ゲーム画面はオリジナル版に近い表現となっており、CGムービーが収録されました。PS版は難易度を三段階から選べるなど遊びやすさにも配慮され、シリーズの人気をさらに高めました。
ゲームでは「掃除」「狩り」などのミニゲームを通じて主人公の能力を成長させる生活パートが存在し、この期間にどのような行動を取るかで主人公のパラメーターが変わっていきます。特にドリームキャスト版は自由度が高く、アイテム探索やイベント発生を楽しむことができ、遊ぶたびに新たな発見がある作りでした。

戦闘の鍵を握るのは「BP(血液ポイント)」と呼ばれるリソースで、敵を倒すことで得られ、魔法や特殊能力の使用に用いられます。また、武器に血を注ぐ「儀式」を通して潜在能力を覚醒させる要素があり、戦術の幅を広げています。装備品も独自性が強く、一度身に着けると外せなくなる「大邪神の鎧」「悪魔の鎧」などリスクとリターンのトレードオフが常に迫られます。
物語は創造神ゴッドと大邪神サタンの因縁や、人類の起源をめぐる壮大なスケールを持ち、白き羽根と黒き羽根の価値観が真逆にひっくり返った世界の倫理がプレイヤーに深い余韻を残します。仲間たちは「平等」「自由」「正義」などを象徴する罪を背負ったキャラクターで、彼らの生き様と選択がドラマを彩りました。プレイヤーは最終的に世界を再創造する運命を背負い、仲間や愛する者のために決断を迫られます。
ゲームソフト
セガサターン版

ドリームキャスト版

プレイステーション版

ブラックマトリクス2(BLACK/MATRIX 2)


続編である『BLACK/MATRIX 2』は、2002年にPlayStation 2で登場しました。本作は前作に比べ、ストーリーの構成がシンプルに整理されており、人間、天使、悪魔の三つ巴の対立構造が明確に描かれます。物語は人間が魔界へ侵攻し、魔王を倒したことで勢力図が崩壊するところから始まります。魔界を治めていた魔王の弟であるレイジが復活を遂げるも、全ての記憶を失っており、彼自身の過去を探りながら人間や天使と戦う道を歩むことになります。
本作では主人公が複数のヒロインたちと交流を深めることでルートが分岐し、それぞれのヒロインに固有のエンディングが用意されています。一部にはバッドエンドも存在し、選択の重みが一層増しています。ヒロインには幼なじみの女戦士ヴィディアや、慈愛に満ちた天使サファエル、人間軍の指揮官リディエールなどが登場し、彼女たちとの関係性が物語を大きく左右します。

戦闘システムは前作から一新され、行動順が敏捷性に依存するリアルタイムに近いターン制が導入されました。さらに攻撃する方向によってダメージが変動する仕組みがあり、戦術性が向上しています。戦闘不能状態のキャラクターが追撃を受けると「死亡」し、撤退扱いとなる点は前作と共通ですが、死亡扱いになるキャラクターは一部に限定されており、ストーリーの進行に影響する場合もあります。
スキルシステムも刷新され、武器の装備はキャラクターのスキルとステータスに依存するようになりました。戦闘を繰り返すことで武器熟練度が上がり、より強力な装備が扱えるようになります。スキルは戦闘終了後に隣接スキルを一つだけ習得する形式で、全てを網羅するには何周もプレイが必要です。周回プレイを想定した作りであり、武器熟練度やアイテムを引き継げるため、繰り返し遊ぶ楽しみが用意されています。

レイジはかつて冷酷な悪魔でありながら姉への想いを抱いており、記憶を失った後もその感情は残ります。記憶を失っているため正義感を持った青年として描かれますが、過去の自分との対峙も物語の重要なテーマです。彼の部下で幼なじみのギルヴァイスや女戦士ヴィディア、悪魔四天王の仲間たちとの絆が、彼の運命を形作ります。
登場する天使軍や人間軍も一筋縄ではいかない信念を持っており、人間側のランガーは天使への復讐を誓う寡黙な戦士、リディエールは悪魔を根絶するために戦いに身を投じる指揮官です。最終的に全てのルートで立ちはだかるのは大天使長メルディエズで、彼は神の降臨を実現するため全生命を滅ぼそうとします。メルディエズの羽根を展開した状態では物理攻撃が効かず、戦略を考える必要があります。
本作には隠しボスとして前作の謎多き存在ファウストも登場し、条件を満たすと戦うことができます。ファウストは異常な強さを持ち、倒すには特殊な手順が必要です。
ブラックマトリクス ゼロ(BLACK/MATRIX ZERO)


『BLACK/MATRIX ZERO』は、2002年にゲームボーイアドバンス向けに発売されました。本作はシリーズの原点であるセガサターン版『BLACK/MATRIX』の数百年前を描いており、従来の作品から舞台と時代を切り離した過去の物語として展開されます。物語は、白き羽を持つ天使、黒き羽を持つ悪魔、そして翼を持たない人間という3つの種族が共存しながらも対立と支配の関係にある世界を背景にしています。主人公は人間の少年でありながら背に白い羽を持つという特異な存在で、彼が天使にさらわれた幼馴染を救い出すために旅立つことから物語が動き出します。

本作のキャラクターイラストは高野裕紀氏が手がけており、それまでのシリーズ作品と比べると柔らかい画風で親しみやすい印象を与えます。一方でストーリー自体は極めてシリアスで、人間が天使と悪魔の支配下で虐げられている世界の理不尽や苦悩が随所に描かれます。主人公は人間であるがゆえに蔑まれながらも、仲間と共に抗う意思を育み、支配階級に立ち向かう決意を固めていきます。
ゲームシステムはストーリーパートと戦闘パートを交互に進めるオーソドックスなシミュレーションRPG形式を採用しています。戦闘ではマップ上に味方や敵を配置し、行動順に応じて攻撃や移動を行います。最大の特徴は、敵を倒すことで得られる「BP(バイオポイント)」の存在です。BPは魔法発動や武器の特殊能力を使用するためのリソースとして扱われ、戦闘での勝敗を左右する重要な要素となっています。BPは一度の戦闘で使い切らなければ次の戦闘に繰り越されるため、計画的な運用が求められます。BPを溜めて強力な技を解放するか、それともこまめに使い戦局を安定させるか、プレイヤーの戦略が問われるポイントです。

さらに本作では、武器にBPを注ぐことで新たな特殊技を解放する仕組みが用意されており、成長要素が戦闘にも深く組み込まれています。難易度のバランスは全体的に高めで、敵AIも単純に突撃してくるのではなく、魔法やアイテムを駆使して味方の弱点を突いてくる場面も多くあります。
物語は、ただ単に「正義と悪が戦う」といった単純な構図ではなく、どちらにも一理ある信念と犠牲が交錯する世界を描いています。天使は一枚岩ではなく、「規格外」と呼ばれる特異体質を持つ者たちが迫害されていたり、悪魔にもまたそれぞれの正義や悲願があったりと、物語を進めるほどに敵味方の境界が曖昧になっていくのです。プレイヤーはそんな複雑な世界の中で、自分なりの答えを見つけながら進んでいきます。
ブラックマトリクス ダブルオー(BLACK/MATRIX OO)


2004年にPlayStation向けに発売された『BLACK/MATRIX OO(ダブルオー)』は、『BLACK/MATRIX ZERO』をベースにしつつ、設定やストーリーをアレンジした作品です。開発者は「ZEROが劇場版だとすれば、OOはTVシリーズのような立ち位置」と語っており、リメイクという枠を超え、独自の体験を提供することを目指しています。
本作の主人公は辺境のキボートス島に住む少年カインです。彼は昼寝と平穏を好む温厚な性格の持ち主で、戦いに身を投じることなど想像もしていませんでした。しかし、幼馴染のマティアが特殊な能力を理由に教団へ連れ去られたことで、その日常が崩壊します。人間でありながら背に白い羽を持つ彼は、自身の出自の秘密にも向き合いながら、仲間たちと共に旅に出ます。

物語ではプロデヴォン教団に属する「天使十審将」と呼ばれる上級天使たちが立ちはだかります。熾天使ベイルや臥天使テリオスなど、いずれも一筋縄ではいかない実力と個性を備えています。彼らは秩序と統制を是とし、「規格外」を容赦なく排除しようとしますが、その過激な思想や葛藤も本作の見どころです。教団内部にも複雑な派閥や陰謀が渦巻いており、プレイヤーは単なる善悪では語れない対立の渦に巻き込まれていきます。
本作ではBPシステムが廃止され、代わりに「ペインリング」と呼ばれる新しい要素が導入されました。ペインリングは装備することでさまざまなスキルを発動可能にする特殊な指輪で、中には召喚系スキルを備えたリングもあります。ペインキラーという存在を呼び出すことで、リング固有のスキルを一時的に解放する仕組みがあり、従来の魔法とは異なる戦術が求められます。リングには「コラボレーション攻撃」という特殊技も存在し、これは術者とペインキラーが合体してフィールド全体を攻撃する強力な一撃となります。このシステムは説明書だけでは理解が難しく、開発側も公式サイトで補足解説を用意するほど複雑でした。

戦闘AIも進化しており、敵はただ突進するだけでなくアイテムや回復、待ち伏せなどを駆使してプレイヤーに挑んできます。特に終盤は敵ユニットの行動が極めて巧妙になり、各キャラクターのスキルや配置を緻密に活用しなければ勝利はおぼつきません。
物語面では主人公カインと彼の闇の人格「アベル」が重要な対立軸になります。アベルはかつてのカインが抱えていた暴力性の化身で、物語終盤に再び顕現し、最終決戦を挑んでくるのです。この自己との戦いは本作のテーマを象徴するクライマックスといえます。また、複数のルートとエンディングが用意されており、選択次第で仲間の運命も大きく変化します。2周目専用の特別なハッピーエンドも存在し、周回プレイを推奨する設計となっています。
加えて、本作にはサーカス団の面々や、過去作のキャラクターがゲスト出演するミニゲームも多数収録されており、それぞれに用意されたエンディングも見ることができます。この徹底した遊び心は、シリアス一辺倒ではない本シリーズの奥行きを感じさせます。
まとめ

「ブラックマトリクス」シリーズは、善悪の価値観が逆転した世界を舞台に、人々の信念や苦悩、愛憎が複雑に絡み合う物語を描いています。緻密な戦略性と、多彩な分岐ルート、仲間の生死がストーリーに直結する重い選択が、唯一無二のプレイ体験を提供します。このシリーズは、RPGに倫理や哲学を深く組み込んだ希有な存在であり、心に刻まれる物語を体験したい方にこそおすすめしたい作品群です。
ブラックマトリクスシリーズの一覧
