本記事では、バウンティソードシリーズ全体の魅力を、物語・キャラクター・戦闘システム・育成要素・関連作品という五つの観点からわかりやすく解説しています。各作品の内容を踏まえつつ、共通して受け継がれる特徴やシリーズならではの魅力を整理し、初めて触れる人でも世界観をつかみやすい構成になっています。
シリーズの概要

バウンティソードシリーズは、戦乱に揺れるエウロペア大陸を舞台に、かつて「不敗の聖騎士」と呼ばれながら失墜した男ソードの再起を中心に描くリアルタイムシミュレーションRPGです。1995年発売の『バウンティ・ソード』を起点に、シナリオを大幅に加筆したリメイク作『バウンティソード・ファースト』、そして100年後の世界を描いた続編『バウンティソード ダブルエッジ』へと続きます。古代兵器「機神」による侵略、反乱軍と国家の思惑、主人公たちの過去と葛藤が重なり合う重厚な物語が特徴です。仲間や敵に至るまで多くのキャラクターに深い背景が与えられ、各選択肢や仲間の生死によってルートが変わるマルチエンディング、クラスチェンジや傭兵制度などの育成要素が、プレイヤーごとに異なる体験を生み出します。関連書籍やドラマCD、サントラなど外部作品も充実しており、ゲーム外でも世界を楽しめる奥行きあるシリーズです。
シリーズの魅力
落ちぶれた英雄を中心に展開する、重厚な物語の魅力

バウンティソードシリーズの大きな魅力のひとつは、主人公ソードを軸に描かれる重厚なドラマにあります。かつて「不敗の聖騎士」と呼ばれた英雄が、ある事件によって国から追放され、酒に溺れて落ちぶれた状態から物語が始まります。一般的なRPGに見られる「若く才能ある主人公が成長する物語」とは異なり、一度頂点を極めた男が過去の傷と向き合いながら再び剣を取る姿に、特有の深みが生まれています。ラインメタルや神祖連邦オルドバといった国々の確執、古代兵器「機神」をめぐる戦争、そしてフュリスという少女との出会いによって動き出す運命の連鎖は、物語全体に大きなうねりを与えます。ソード自身の後悔や苦悩が戦いの背景と絡み合い、彼だけではなく仲間たちの人生にも影響を与えていく構図は、シリーズを通して濃密に描かれています。さらにプレイヤーの選択によってルートや結末が変わるため、一度のプレイでは全貌が見えない複雑さも魅力です。敵として立ちはだかる人物たちにもそれぞれの立場や信念があり、単純に善悪で区切らない作りは物語に厚みを持たせています。こうした多層的なドラマが積み重なることで、戦場の悲しみや人間同士の複雑な感情が丁寧に浮かび上がり、プレイヤーはソードとともに世界の重みを実感しながら物語を進めることになります。
多彩なキャラクターと二つ名が生み出す独特の存在感

シリーズには、主人公だけでなく膨大なキャラクターが登場します。彼らは単なる仲間や敵として配置されているのではなく、全員に背景や年齢、過去の関係、そして印象的な二つ名が与えられています。たとえばコルツは「老練なる銀狼」と呼ばれ、落ち着きあるベテランらしさと祖国に対する深い忠義を体現しています。一方、修道院から飛び出して賞金稼ぎとなったヘンメリーには「ブラッドシスター」という二つ名があり、育ちの良さと豪快さの両面が伝わります。ロジャーとミランダは若く未熟ながらも理想を掲げて反乱軍に身を投じ、「若き炎の剣士」「辺境の聖女」として成長していく姿が描かれます。また、旅の吟遊詩人として登場するファウストは、実は強大な黒魔術を使う人物で、穏やかな態度からは想像できないほどの力を秘めている点が興味深い要素となっています。敵側にも魅力を持つ人物は多く、オルドバ四将軍は闘将ダークロード、猛将レオパード、魔将オルトルート、知将ルーネと個性がはっきり区別され、単なる悪役にとどまらない存在感を放っています。シリーズは人間関係の網が細かく張り巡らされており、ソードの過去を知る者や立場の違いから敵味方に分かれた者たちの交錯が、物語を一層印象的にしています。キャラクターの数が多いにもかかわらず、それぞれが物語の一部として確かな役割をもち、誰もが世界全体の広がりを感じさせてくれる点がシリーズの大きな魅力です。
リアルタイムで動き続ける戦場がもたらす緊迫感

バウンティソードシリーズの戦闘システムは、常に戦況が動き続ける「リアルタイムシミュレーション」であり、これが他作品にはない緊張感を生み出しています。スーパーファミコン版から採用されたこの形式は、ターン制のように順番を待つのではなく、敵も味方も同時に行動する中でプレイヤーが随時指示を出す仕組みです。プレイステーション版の『バウンティソード・ファースト』では、この戦闘が「ハイテンスバトル」として進化し、複数の味方が同時に攻撃できるようになり、マップ全体を俯瞰しながら素早い判断が求められる緊迫した戦いが実現しました。戦場は広く、複数の戦線が同時進行するため、どこで何が起きているかを常に把握しておく必要があります。位置取りを誤れば味方を巻き込んだり、重要な仲間を失う危険もあり、こうしたシビアな戦況がプレイヤーの集中力を途切れさせません。続編の『ダブルエッジ』では、このリアルタイム性を引き継ぎつつスキルのSP管理やヴォイドの導入など新要素が加わり、より複雑で戦略性の高いバトルへと発展しました。時間経過とともに状況が変化する戦場の中で、どのユニットをどこへ動かすのか、どのスキルをどの瞬間に使うかなど、判断一つで戦況が大きく変わるため、常に緊張感のあるプレイが続きます。こうしたリアルタイムならではの臨場感こそが、シリーズを特徴づける要素となっています。
選択と育成が物語を変える多層的なやり込み要素

シリーズ全体に共通する特徴として、キャラクターの育成や仲間の加入条件、選択肢によって物語が大きく変化する点が挙げられます。『バウンティソード・ファースト』では、キャラクターが特定のレベルに達するとクラスチェンジが可能になり、より強力な上級職へと成長できます。戦士からナイトへ、ガンマンからスナイパーへといった変化に加えて、特定のキャラクターだけが別系統の職へ移行できる特性もあり、育成の幅が広がっています。また、街で雇える傭兵の存在は戦力の調整に大きく役立ち、資金管理や再契約の判断がプレイヤーの戦略に影響を与えます。闘技場では賞金や経験値を得られるため、強化の場として活用することもでき、プレイスタイルに合わせた育成が可能です。さらに重要なのが、選択肢や仲間の生死によってルートが変化するマルチエンディングの存在です。とくにソードとフュリスの関係値は画面に表示されない隠しパラメータであり、会話の選び方ひとつが仲間や結末に影響します。また、スーパーファミコン版ではクリア済みマップの探索によって仲間が増える仕組みがあり、寄り道がそのまま物語に影響する点も特徴的です。『ダブルエッジ』ではケーンとセラのどちらを主人公に選ぶかで物語の構造が変わり、特にセラ編では制限時間付きマップが多いため緊張感のある戦いが続きます。こうした選択と育成の積み重ねによって、プレイヤーごとに異なる物語が生まれる点がシリーズの大きな魅力です。
音楽・小説・漫画・ドラマCDによる世界の広がり

バウンティソードシリーズはゲーム本編だけで完結せず、さまざまな媒体を通して世界が深く掘り下げられている点も大きな魅力です。音楽面では田中公平が手がけた壮大なBGMがシリーズの雰囲気を力強く支えており、スーパーファミコン版の制限を感じさせない高品質な楽曲は多くのプレイヤーに強い印象を残しました。プレイステーション版ではさらに音質が向上し、物語の緊張感や情緒をより繊細に表現しています。サントラCDや限定配布のBGM集も制作され、ゲームとは別に音楽だけでも楽しめるようになっています。また、公式ガイドブックではストーリー解説だけでなく、エウロペア大陸の年表や機神の詳細、十年前の第17独立騎士団の物語などが収録され、ゲーム内で描ききれなかった部分が補われています。小説『聖剣の墓標』ではゲームとは異なる設定が追加され、物語を別視点で楽しむことができ、漫画『ラインメタル異本』では世界観そのものが大胆に再構築され、同じシリーズでもまったく異なる物語が展開します。さらにドラマCD『鋼鉄の龍』では、ゲーム本編では語られなかったエピソードが描かれ、フュリスやクレイオの新たな側面を知ることができます。こうした多彩な関連作品によって、バウンティソードという世界はゲーム外へ広がり続け、プレイヤーの体験をより豊かにしています。
シリーズの一覧
バウンティ・ソード


シリーズの出発点となった『バウンティ・ソード』は、1995年9月8日にスーパーファミコン用ソフトとして発売されました。発売元はパイオニアLDCで、この作品が同社にとってゲーム業界への本格的な一作目となります。作品の舞台は戦乱の世界で、主人公は「ソード」という名の男です。彼はかつて英雄と呼ばれた騎士でしたが、現在はすっかり落ちぶれた31歳の賞金稼ぎとなり、反乱軍の一員として連邦軍と戦うことになります。物語は、彼が謎めいた少女と出会うことから再び立ち上がっていく姿を中心に描かれます。
この作品は、シナリオと音楽の両面で高い評価を受けています。脚本はアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』や『ゲートキーパーズ』などでも知られる山口宏が担当しており、「落ちぶれた元英雄」が主役という設定を生かした大人向けの重いドラマが展開します。単純な勧善懲悪ではなく、かつての栄光と現在の失意、過去の事件に縛られた主人公の心情などが丁寧に描かれているため、遊んだ人の心に強く残る内容になっています。
音楽面では、『サクラ大戦』シリーズなど数多くの名曲を生み出した田中公平が作曲を担当し、サウンドプログラムには『ごきんじょ冒険隊』や『ミスティックアーク』でコアなゲームファンから支持を集めた森彰彦が参加しています。スーパーファミコンというハードの制約があるにもかかわらず、壮大でドラマチックなBGMが作品世界を大きく盛り上げ、実際にプレイした人たちから非常に高い評価を受けました。

一方で、ゲームシステムには粗さもありました。本作はターン制やヘックス(六角形マス)といった従来のシミュレーションゲームの仕組みを捨て、リアルタイムで戦況が動くシステムを採用しています。しかし、誰か一人が攻撃動作を行っている間は他のキャラクターが攻撃できない仕様になっているため、どうしてもテンポが悪く感じられる場面が多く、遊び心地に不満を持つプレイヤーも少なくありませんでした。
また、半自動でキャラクターが動く戦闘AIの挙動も話題になりました。味方がほんの小さな障害物に引っかかったまま同じ場所をくるくる回ってしまうなど、プレイヤーの思い通りに動いてくれない場面が多く、それがある種の“ネタ”として語り草になっています。ただし、こうした問題がある一方で、戦闘不能になったキャラクターが完全に死亡せず、次のマップに出撃できなくなるだけで済むことや、即死効果を持つ攻撃や攻撃魔法が発動する強力なアイテムの存在によって、全体の難易度はシリーズの中でもかなり低く設定されています。遊び方によっては、バランスが崩れるほど楽になってしまうこともあるほどです。

育成面では、レベルアップ時の能力値上昇にランダム要素があるのも特徴です。同じキャラクターでも育て方や運によってステータスが大きく変わることがあり、シリーズの中でこの要素を持っているのはスーパーファミコン版だけです。また、一度クリアしたマップを後から探索できる仕組みがあり、その探索中に出会うことで仲間に加わるキャラクターが多数存在するのも本作ならではの楽しみ方になっています。メインストーリーを進めるだけでなく、クリア済みマップを歩き回ることで、新たな仲間を探す“寄り道”プレイができるわけです。
後に、この作品をプレイステーション向けに再構成した『バウンティソード・ファースト』が発売されますが、その際に合体攻撃や序盤の一部シナリオが削られたり、細かい仕様が変化したりしました。そのため、リメイク版ではなく、あくまでオリジナルのスーパーファミコン版を好むファンも少なくありません。物語やキャラクター、音楽といった魅力と、システム面の粗さが同居した「荒削りな名作」として、シリーズの原点を形作っている作品です。
バウンティソード・ファースト


『バウンティソード・ファースト』は、1997年6月6日にプレイステーション用ソフトとして発売されたリアルタイムシミュレーションRPGです。1995年にスーパーファミコンで登場した『バウンティ・ソード』を土台に、大幅なシナリオ加筆とシステム調整を行ったリメイク作品であり、「バウンティソード・トリロジー」と名付けられた3部作企画の第1弾でもあります。後に続編の『バウンティソード ダブルエッジ』が発売されましたが、3作目として予定されていた『バウンティソード・サード』は現在に至るまで世に出ていません。
プレイステーションへの移行によってCD-ROM1枚の容量を活かせるようになり、サウンド面のクオリティは大きく向上しました。もともと評価の高かったBGMが、より迫力ある音質で鳴り響くようになり、追加されたシナリオと合わせて「シリーズ最高傑作」と呼ぶ声も多い作品です。2011年にはゲームアーカイブスで配信も開始され、レーティングはCERO:C(15才以上対象)となっています。
物語の舞台は神暦4093年から始まります。南エウロペア大陸の小国「神祖連邦オルドバ」が引き起こした戦争は、瞬く間に大陸全土へと広がっていきました。オルドバは古代遺跡から発掘した超兵器「機神」を手にし、その力で周囲の国々を次々と焼き尽くしていきます。南だけでなく北エウロペアの国々も焦土となり、神暦4095年には北エウロペア大陸のほとんどがオルドバの支配下に落ち、残された独立国は北方の島国「ラインメタル連合共和王国」だけになっていました。
このラインメタル出身の元騎士こそが、主人公のソードです。彼はかつてラインメタル第17独立騎士団を率いるエースとして活躍し、「不敗の聖騎士(マスターオブソード)」と呼ばれるほどの剣の腕前を誇っていました。しかし、10年前に起きた第二次エウロペア戦争終結間際のある事件によって「味方殺し」という汚名を着せられ、軍から追放されてしまいます。それ以来、ソードは酒に溺れながら、その日暮らしの賞金稼ぎとしてくすぶるような生活を送ることになりました。

物語は、そんな彼の前に一人の少女が現れる場面から大きく動き出します。少女の名はフュリス。乗っていた船が沈没し、ラインメタルの岸辺に流れ着いたところでソードと出会います。彼女はソードを「しがない賞金稼ぎ」と言い放ち、周囲にもきつい言葉をぶつける口の悪い少女ですが、その正体は神祖連邦オルドバの皇帝エリュシオンの一人娘、オフィーリア・レス・エリュシオンです。父の暴走を止めるために城を抜け出し、自ら反乱軍を率いて立ち上がった人物であり、ソードへの依頼も最終的には「父を討つこと」、つまり父親である皇帝を倒してほしいという非常に重いものになっていきます。
ソードのそばには、テティスという小さな妖精の姿もあります。手のひらほどの大きさで感情豊かに振る舞い、酒に溺れるソードの体を心配したり、フュリスとよく言い合いをしたりするムードメーカー的存在です。彼女の正体は、古代文明によって生み出された人工生命体であり、「Terminal Transport System」を略したTTS(テティス)だとされていますが、本人は自分の出自を忘れており、その能力の全貌ははっきりしていません。こうした設定は、機神や古代文明といった世界観の奥行きを感じさせる要素になっています。
旅の中でソードたちに加わる仲間たちも、多彩な背景を持っています。同じラインメタルで賞金稼ぎをしているベテランのコルツ、修道院暮らしから飛び出して賞金稼ぎになったヘンメリー、元オルドバ軍でありながら圧政に耐えられず反乱軍に参加した剣士ロジャーと僧侶ミランダ、金で暗殺を請け負う冷徹な殺し屋ツキカゲ、東洋からやってきた風水士ロブン、ドラゴン退治に異常なこだわりを持つ格闘家マウザー、自分の力を嫌い吟遊詩人として放浪する大魔導士ファウスト、銃の腕に秀でたガンマンのシュタイアとサムライのリュウビ、祖国を滅ぼされ復讐と姉探しのために戦う女騎士アテナ、ソードに一目惚れして反乱軍に加わった魔法使いエルマ、人間とは異なる存在であることが示唆される変身能力を持った少年リリンなど、どのキャラクターにも短いながら印象に残るエピソードや二つ名が与えられています。
敵側にも多くの人物が登場します。ソードの故郷であるラインメタルには、ソードの元同僚であり今は軍務大臣となったマクベスや、最初はソードを信用しないもののその実力を認める騎士デトニクスがいます。対するオルドバ側には、皇帝エリュシオンを頂点に、闘将ダークロード、猛将レオパード、黒魔術を操るオルトルート、知略に長けたルーネという“四将軍”が存在し、それぞれが独自の背景を持ちながらソードたちの前に立ちはだかります。ロジャーとミランダの元上官でありながら良識的な騎士であるゴーシュ、祖国を守るためにオルドバに仕えるサムライのカンウ、連邦に雇われた忍者アカツキなど、敵味方にかかわらず一筋縄ではいかない人物が多く登場することで、単純な勧善懲悪にはならない物語に厚みが生まれています。

世界観を語るうえで欠かせないのが、古代兵器「機神」の存在です。オルドバは古代遺跡からさまざまなタイプの機神を発掘しており、それぞれに番号と役割が与えられています。都市攻撃に特化した1号機、複数の腕で攻撃する対人戦向けの2号機、重火器を備えた3号機、ドラゴンのような姿で地中を移動する4号機、高速移動型の5号機、精神攻撃を得意とする6号機、瞬間移動も可能な7号機、暗殺任務に適した最小サイズの8号機、対象の生命を時間経過で停止させる9号機、中距離砲撃用の10号機、自爆攻撃に特化した11号機、そして剣と魔法を使う唯一の人型である12号機と、設定だけでもバリエーション豊かです。さらに、これらを上回る最終兵器とされる「超機神」も存在しますが、物語の時点では起動に至っておらず、その性能は謎に包まれています。
機神の復活と呼応して地上に姿を現す「黄道12神」も重要な要素です。彼らは普段は各地の石板の中で眠っており、選ばれた「神の代理人」の前にだけ姿を現れて、その力が封じられた指輪を授けます。軍神アレス、美神ヴィナス、伝令神ヘルメス、静寂神セレネ、太陽神アポロン、知神マーキュリー、愛神アフロディテ、冥王神プルートゥ、大神ゼウス、時神クロノス、天空神ウラヌス、海神ポセイドンといった神々の名前が登場し、戦争劇の裏で神話的なスケールを感じさせる世界観が広がっていきます。
ゲームシステム面では、「リアルタイムシミュレーション」というジャンル名の通り、敵と味方のユニットがマップ上をリアルタイムに動き続けます。プレイヤーは随時ユニットに移動・攻撃・回復などの指示を出しますが、基本的にはあらかじめ設定した命令や作戦方針に従ってユニットが自動で行動するため、状況を見て的確な指示を出し直すことが重要になります。マップは広く、複数の戦線で同時に戦闘が発生することもあり、全体を俯瞰する視野の広さが求められます。スーパーファミコン版と比べると、インターフェースが大きく作り直され、複数のキャラクターが同時に攻撃できるようになるなど、戦闘の見た目や操作感はかなり改善されています。
その一方で、難易度は大幅に上昇しています。スーパーファミコン版でゲームバランスを崩すほど強かった即死攻撃や強力な攻撃アイテムは削除され、戦闘不能になった仲間はマップ終了後も戻ってこない「完全な死亡」となります。特定のアイテムを使って戦闘中に蘇生しない限り、再び戦場に立たせることはできません。さらに、ヘックスを使わない仕様のため攻撃範囲の境界があいまいであるにもかかわらず、範囲攻撃が味方にもダメージを与えるようになったことで、位置取りに細心の注意が必要なゲーム性になりました。この点については、「システムとの相性が悪いのではないか」という批判もありますが、その厳しさを「やりごたえがある」と好意的に受け止める意見もあり、プレイヤーによって評価が分かれる要素になっています。

育成とやり込みの面では、「クラスチェンジ」や「傭兵」「闘技場」「関係値」といったシステムが用意されています。キャラクターは一定レベルに達すると、戦士からナイト、ガンマンからスナイパーといった具合に上級クラスへ転職でき、一部の職業では特殊なアイテムを条件として要求されます。また、多くのキャラクターは決められた系統の中でしかクラスチェンジできませんが、一部のキャラクターは魔導師系から僧侶系へ、戦士系から忍者系へといった特殊な転職が可能で、育て方の幅を広げています。
ストーリーに関係する仲間とは別に、お金を払って一時的に雇える「傭兵」も存在します。最初は4回だけ戦闘に参加させることができ、規定回数が終わると再契約するかどうかを選べます。2回の再契約を行うと、以後は通常の仲間と同じように無償で共に戦ってくれるようになり、資金の使い方や人材のやり繰りといった要素に戦略性を与えています。街にある「闘技場」では、お金を払って報酬や経験値を稼ぐ戦闘に挑戦でき、ここではHPが0になっても死亡扱いにならないため、何度も気軽に挑戦できます。
物語の分岐にも工夫があります。キャンプモードでの選択肢や、特定キャラクターが仲間になっているか、あるいは死亡していないかによってルートが分岐し、一度のプレイですべての展開を見ることはできません。マルチエンディングが採用されているため、誰を仲間に入れるか、どの戦略を選ぶかといった選択が結末に直結します。また、テティスではなくフュリスとの信頼関係を表す隠しパラメータ「関係値」が設定されており、会話中の選択によって数値が変化し、その上下が仲間になるキャラクターやエンディングにも影響します。ただし、フュリスの性格は素直ではないため、一見好かれそうな返答を選ぶと逆に評価が下がることもあり、単純な“好感度システム”とは異なる味わいがあります。
『バウンティソード・ファースト』には、ゲーム本編以外にも関連作品が存在します。公式ガイドブックではシナリオ攻略やアイテム紹介だけでなく、エウロペア大陸の年表や機神の詳細な機体説明、10年前のソードたちの物語、開発者インタビューなどが掲載され、世界観をより深く知ることができます。また、小説版『バウンティソード・ファースト 〜聖剣の墓標〜』や、世界観や設定を大胆に変えた漫画『バウンティ・ソード 〜ラインメタル異本〜』も出版されており、同じシリーズでもメディアによって別の解釈がなされていることがわかります。ドラマCD『バウンティ・ソード 外伝 -鋼鉄の龍-』では、ゲーム本編の設定をベースにしながら完全オリジナルの物語が展開し、フュリスとクレイオのエピソードなど、ゲームに入りきらなかった要素が語られています。音楽面では、サントラCD『バウンティ・ソード音楽編』や、『ダブルエッジ』の発売時にキャンペーンとして限定配布された『BOUNTY SWORD BGM SPECIAL』なども制作され、シリーズの音楽の魅力を別の形で楽しめるようになっています。
バウンティソード ダブルエッジ


『バウンティソード ダブルエッジ』は、1998年7月30日にプレイステーション用ソフトとして発売された、リアルタイムシミュレーションRPGです。『バウンティソード・ファースト』から100年後の世界を舞台にした続編であり、「バウンティソード・トリロジー」の第2弾として位置付けられています。前作から続く世界観を受け継ぎつつ、新たな主人公たちと戦闘システムを導入した作品です。
物語の舞台は、「アヴァロン」と呼ばれる鋼鉄の島です。プレイヤーは若い野心家であるケーンか、未亡人のセラのどちらかを主人公として選び、選ばなかった方はライバルキャラクターとして物語に登場します。ケーンを主人公にしたルートは「イージーエッジ」、セラを主人公にしたルートは「ハードエッジ」と呼ばれ、ふたつの視点から「12神の指輪」を巡る争奪戦が描かれます。

ハードエッジ側は難易度が高く、各マップに設定された制限時間内にクリアできなければゲームオーバーになるという厳しい条件が課されています。特に戦力が整っていない序盤のマップは、『ファースト』をやり込んだプレイヤーでも苦戦するほどで、同じ物語の大枠を共有しながらも、主人公の違いによってゲーム体験そのものが大きく変化する構成になっています。
戦闘システムは、基本的には前作までのリアルタイムシミュレーションの流れを受け継いでいますが、多くの新要素が加えられています。とくに目玉となっているのが、8体まで編成できる戦闘ロボット「ヴォイド」の存在です。プレイヤーは最大4人の味方キャラクターに加えて、このヴォイドを最大8体まで戦場に送り出すことができ、広大なマップで大規模な戦闘を繰り広げることになります。ヴォイドはチューンナップによって性能を調整できるため、どのように強化していくかが戦略上の大きなポイントになります。

また、スキル使用時に消費するSPの仕組みも前作から変化しています。『ダブルエッジ』では、マップ開始時のSPは0からスタートし、時間経過とともに少しずつ溜まっていきます。このため、序盤は強力なスキルを連発することができず、戦況に応じてどのタイミングでSPを使うか、どのスキルを優先するかといった判断が重要になります。戦闘に参加できるキャラクターの人数は5名から4名に減っていますが、その分ヴォイドの存在感が増しており、人間のキャラクターと機械兵器の役割分担を考えることが必要になります。
『ファースト』で批判の声が上がった要素のいくつかは、『ダブルエッジ』で見直されています。たとえば、範囲攻撃が味方を巻き込んでしまう仕様は、ごく一部のスキルを除いて解消されており、基本的には味方を巻き込まない形に変更されています。また、戦闘不能になったキャラクターも、マップが終われば復活するようになっており、前作のように一度倒れたら完全な死亡という厳しいペナルティはなくなりました。この点は、プレイヤーにとって遊びやすくなった部分といえます。

しかし、すべてが改善されたわけではありません。ヴォイドのような新要素は魅力的である反面、システムとしてはとっつきにくさもあり、ロード時間の長さや操作しづらくなったインターフェースなど、システム面での劣化と受け取られる部分もありました。さらに、一部の登場人物については、設定として語られている性格や背景と、作中で実際に見せる言動がうまく噛み合っていないと感じるプレイヤーも多く、物語面でも『ファースト』ほどの高い評価には届かなかったようです。セールス面でも前作ほどの勢いはなく、シリーズ全体としてみると、評価が分かれる作品になっています。
それでも、『バウンティソード ダブルエッジ』は、100年後という時間の流れを通じて『ファースト』の世界を広げた続編であり、ヴォイドや「12神の指輪」といった新要素を通じて、シリーズ世界の別の一面を見せてくれる作品です。2人の主人公の対立構造や、イージーエッジとハードエッジという難易度の違いなど、何度も遊んで違いを楽しめるように作られている点も、シリーズならではの魅力だといえます。
まとめ

バウンティソードシリーズは、派手なグラフィックや分かりやすい勧善懲悪を前面に出した作品ではありません。むしろ、落ちぶれた元英雄ソードの視点から描かれる重い戦争ドラマや、世界を揺るがす古代兵器「機神」と神々の指輪をめぐる神話的な設定、そしてプレイヤーの判断一つで仲間が死に、物語の行方やエンディングが変わっていくシビアなゲームデザインが特徴のシリーズです。
スーパーファミコン版『バウンティ・ソード』は、リアルタイムシミュレーションへの挑戦やランダム成長、クリア済みマップ探索といった独自性とともに、システム面の粗さやAIの挙動など、良くも悪くも“味”のある作品としてシリーズの原点に位置しています。『バウンティソード・ファースト』は、その骨格を受け継ぎつつ、シナリオの大幅な加筆やサウンドクオリティの向上、多彩な分岐とマルチエンディング、クラスチェンジ・傭兵・闘技場・関係値といったやり込み要素を加えることで、シリーズの代表作としての完成度を高めました。100年後の世界を描いた『バウンティソード ダブルエッジ』は、評価に課題を残しながらも、ヴォイドや2人の主人公といった新しい試みを通じて、シリーズ世界をさらに広げようとした意欲作です。
また、ガイドブックや小説、漫画、ドラマCD、サントラCDなど、周辺作品も豊富で、ゲーム本編だけでは語りきれない世界やキャラクターの姿が、さまざまな媒体を通じて補完されています。とくに、10年前の第17独立騎士団の過去や、ゲームでは描ききれなかったエピソードが外部作品で語られている点は、世界観に厚みを与える役割を果たしています。
本来は3部作として構想されながら、最終作『バウンティソード・サード』は発売されていません。それでもなお、今もファンの間で語り続けられているのは、主人公ソードの苦悩と再生の物語や、敵味方それぞれの立場と信念が丁寧に描かれた群像劇、そして田中公平らによる印象的な音楽が、プレイした人の記憶に強く刻まれているからだと言えます。システム面では荒削りな部分や好みの分かれる要素もありますが、だからこそ他に似た作品の少ない個性的なシリーズとして、バウンティソードは今も独自の存在感を放ち続けています。
バウンティソードシリーズの一覧





















