本記事では、「黄金の太陽」シリーズ全体の魅力や世界観、物語の流れ、特徴的なゲームシステムをわかりやすく解説しています。各作品のつながりやキャラクターたちの活躍、独自のエナジーやジンを使った戦略性など、シリーズを深く楽しむための要素をまとめています。
シリーズの概要

「黄金の太陽」シリーズは、キャメロット開発・任天堂発売のRPGで、GBAの『開かれし封印』『失われし時代』、DSの『漆黒なる夜明け』の3作から成る作品群です。地・水・火・風の4つのエレメンタルと、それを操るエナジスト、封印された古代科学「錬金術」をめぐる物語が軸になっています。かつて錬金術は世界を繁栄させましたが、その力を恐れた人々が封印した結果、世界は崩壊の危機に陥ります。主人公たちは、錬金術の封印を守ろうとする立場と、世界を救うために解放しようとする立場の狭間で選択を迫られます。エナジーを使ったフィールドの謎解きや、ジンとクラスチェンジ・召喚獣を組み合わせた戦闘システムが特徴で、1・2作目は連続した長編、3作目はその30年後の世界を描きます。世界観とシステムの両面が高く評価され、今なお遊ばれているファンタジーRPGです。
シリーズの魅力
錬金術とエレメンタルがつくる重厚な世界観

「黄金の太陽」シリーズの世界では、地・水・火・風という四つのエレメンタルがあらゆるものの根源とされています。そして、この力を自在に扱える者たちはエナジストと呼ばれ、主人公たちもその一員として物語の中心に立ちます。かつてこの世界は、エレメンタルを利用した錬金術と呼ばれる古代科学によって大いに繁栄しましたが、その力があまりにも強すぎたため、人々は自ら封印する道を選びました。その結果、文明は衰え、各地に古代遺跡だけが残された世界から物語が始まります。
錬金術の封印は、四つのエレメンタルの灯台と霊峰アルファ山のソル神殿によって支えられています。このうちソル神殿の仕組みが破られたことが、シリーズ全体のきっかけとなります。また、この世界は球体ではなく平面の世界として描かれ、端まで行くとガイアフォールと呼ばれる巨大な滝で世界が途切れています。「失われし時代」では、このガイアフォールが拡大し、世界そのものが縮んでいることが判明し、それが錬金術封印の影響であると明かされます。つまり、錬金術の封印は一時的には世界を守る手段でありながら、長期的には世界を崩壊へと導いているという、単純ではない構図が描かれています。
この世界観をさらに奥深いものにしているのが、灯台を解放しようとする側の事情です。サテュロスやメナーディ、そしてカーストやアガティオたちは、ただ世界を滅ぼそうとしているわけではありません。彼らの故郷であるプロクス村は、錬金術封印による世界崩壊の影響を強く受けており、村を救うために灯台の解放を目指しています。主人公側は錬金術の解放を災厄と捉え、敵側は解放こそが救済だと信じて行動しているため、どちらか一方が完全な正義というわけではありません。この対立構造が物語に重みを与え、「封印か解放か」というテーマがシリーズ全体を通して語られていきます。錬金術やエレメンタル、ガイアフォールといった要素が一体となり、「黄金の太陽」の世界はただのファンタジーではない独自の厚みを持った舞台として成り立っています。
エナジーを駆使したフィールド謎解きの面白さ

多くのRPGでは、魔法は主に戦闘のために使われますが、「黄金の太陽」ではエナジーが戦闘と探索の両方で重要な役割を果たします。攻撃用や回復用、補助用といった役割を持つ点は一般的な魔法と似ていますが、本作ではフィールド上でも積極的に使用するよう設計されています。ロビンやガルシアが序盤から扱えるムーブは、離れた場所にある岩や柱を動かすことができ、道を切り開いたり仕掛けを動かしたりするときに欠かせない力です。火のエナジストが使うファイアボールは敵への攻撃だけでなく、フィールドで炎を飛ばして仕掛けを作動させる用途にも用いられます。こうした仕組みによって、プレイヤーは「戦うための技」を「世界を動かす道具」としても捉えながら進んでいくことになります。
どのエナジーを扱えるかは、キャラクターの属性とクラス、そして物語の進行によって変化します。特定の遺跡を攻略したり、イベントを進めたり、専用のアイテムを手に入れることで新たなエナジーが解放されていきます。そのたびに、これまで通れなかった場所や怪しい仕掛けを思い出し、「このエナジーなら解けるのではないか」と試してみたくなる流れが自然と生まれます。単に敵を倒して先に進むだけではなく、手に入れた力をどう使えば行き止まりを突破できるのかを考える過程が、冒険そのものの手応えを高めています。
エナジーという発想の背景には、「なぜRPGではお城に行くと王様が何でも教えてくれるのだろう」という疑問がありました。プレイヤーが自分の力で情報を引き出し、謎を解き明かす遊びを作りたいという考えから、心を読む力や超能力的な要素が長い時間をかけて温められ、それがエナジーの原型になったとされています。その結果、生まれたのが、フィールドでエナジーを使いながら情報を集め、仕掛けを「自分で読み解いていく」プレイ体験です。「漆黒なる夜明け」では、エナジーやクラスの数が増え、さらに多彩な謎解きが用意されています。用語辞典機能や、文字に読みが表示される仕様なども加わり、世界観の理解と謎解きの両方をサポートする形になっています。エナジーを使って世界そのものに働きかける感覚は、「黄金の太陽」ならではの探索の面白さを支える大きな魅力です。
ジンとクラスチェンジが生み出す奥深いバトル

「黄金の太陽」シリーズの戦闘と育成を語るうえで欠かせないのが、ジンと呼ばれる精霊の存在です。ジンは四つのエレメンタルのいずれかを象徴しており、フィールド上で遭遇したり戦闘で倒したりすることで仲間にできます。キャラクターにジンを装備すると、HPや攻撃力などのステータスが上昇し、それぞれ独自の技を戦闘で使用できるようになります。「開かれし封印」では属性ごとに七種、合計二十八種が登場し、「失われし時代」ではさらに数が増えて属性ごとに十一種、合計四十四種となり、二作品で七十二種ものジンが存在します。この多さが、プレイヤーが自分なりの組み合わせを考える楽しさにつながっています。
ジンの真価は、キャラクターのクラスと密接に結びついている点にあります。本作では、クラスが固定されておらず、装備しているジンの属性と数によってクラスが決まります。クラスが変わると、基礎ステータスが大きく変化し、扱えるエナジーの種類もガラリと変わります。同じキャラクターでも、ジンの配分次第で攻撃寄りにも回復寄りにもなれるため、パーティ全体の役割分担を考える幅が非常に広くなっています。どのキャラクターにどの属性のジンを何体持たせるのか、誰を前衛にし誰を支援役にするのかといった判断は、すべてプレイヤーに委ねられています。
しかし、ジンにはメリットだけでなく、意図的に設けられた制限もあります。ジンはパーティ内で公平に分配する必要があり、特定のキャラクターだけに大量に装備させることはできません。また、ジンはセット、スタンバイ、リカバリーという三つの状態を取り、ステータス上昇の恩恵が得られるのはセット状態のときだけです。戦闘中にジンを使うとスタンバイ状態となり、キャラクターのステータスは一時的に弱まりますが、そのスタンバイ状態のジンを消費することで召喚獣を呼び出すことができます。召喚獣は強力な攻撃を行いますが、使用後のジンはリカバリー状態となり、しばらく何の効果も発揮しません。しかも一人のキャラクターにつき一ターンに一体しか復帰しないため、召喚を多用すると、一定時間パーティが弱体化したまま戦うことになります。
このため、プレイヤーは「安定した能力を維持しながら戦うか」「ジンを解き放って一気に形勢を逆転させるか」という判断を常に迫られます。隠しダンジョンではジン七十二種を必要とする場所もあり、コンプリートを目指すこと自体が大きなやり込み要素です。「漆黒なる夜明け」では、新たなジンやクラスも登場し、ジンのイラストも一体一体違う姿で描かれるなど、システム面とビジュアル面の両方からジンの存在感が強調されています。ジンの配置や召喚のタイミングを考えながら戦術を組み立てていく流れは、数あるRPGの中でも独特の奥深さを持ち、「黄金の太陽」のバトルを強く印象づける魅力となっています。
作品をまたいで続く物語とキャラクターの関係性

「黄金の太陽」シリーズは、一作ごとが独立した短編物語ではなく、特に「開かれし封印」と「失われし時代」が連続した長編として構成されている点に特徴があります。「開かれし封印」は、ヴィーナス灯台での出来事とその直後までで物語が終わり、完全な完結には至りません。続く「失われし時代」では、視点がガルシア側に移り、ヴィーナス灯台起動後の世界が描かれます。プレイヤーは別の一行の旅を追いかけながら、やがてロビンたちと合流し、錬金術を巡る対立に決着がつく流れを体験することになります。一作目で積み重ねた出来事や選択が、二作目で本格的に回収されていく構成が、大きな物語としての手応えを生み出しています。
登場人物の設定や関係性も丁寧に作り込まれています。ロビンはハイディア村の地のエナジストで、好奇心からソル神殿に入ったことがきっかけで、エレメントスター強奪に関わってしまいます。その責任を負う形で旅に出る彼は、仲間から頼られるリーダーでありながら、年相応の面も持つ青年として描かれます。ジェラルドは村長の孫で火のエナジスト、やんちゃでトラブルメーカーですが、仲間思いの一面も持ち合わせています。イワンはハメットの養子で風のエナジスト、年下ながら聡明で、ラマ寺のハモとの関係が「失われし時代」で明かされます。メアリィはマーキュリー灯台を守る一族の末裔で、水のエナジストとして灯台解放を止めるために旅立ちます。
「失われし時代」では、ガルシアを中心とする新しい一行の旅が描かれます。ガルシアはハイディア村出身の地のエナジストで、サテュロスたちに助けられた過去を持ちながらも、彼らの横暴には反発しています。妹のジャスミンは火のエナジストで、ロビンやジェラルドと幼なじみという立場から、ロビンたちと敵対することに複雑な感情を抱えています。シバはラリベロの町に空から降ってきた風のエナジストで、自分の出生の秘密を求めてガルシアたちと旅を続けます。さらに、錬金術学者スクレータやレムリアのピカード、トレビの支配者バビ、チャンパのオババとパヤヤーム、レムリア王ハイドロ、伝説の大盗賊ルンパなど、多くの人物との出会いが物語を広げていきます。
「漆黒なる夜明け」では時間が三十年進み、かつての主人公たちが「ハイディア戦士」として語り継がれている世界が舞台になります。ムートはロビンとジャスミンの息子、カリスはイワンの娘、テリーはジェラルドの息子、クラウンはメアリィの息子、レオレオはパヤヤームの息子であり、前作までの物語と血縁を通じてつながっています。スクレータやロビンも登場し、「黄金の太陽」現象によって老化が遅くなっているため、三十年後でも若々しい姿を保っています。また、スペードやハートと共に行動する仮面の男エースが、実は「失われし時代」のアレクスであると明かされるなど、敵側の人物もシリーズ全体を通じて存在感を持ち続けます。
このように、「黄金の太陽」シリーズは単なる一回限りの冒険ではなく、複数の作品にわたってキャラクターの人生や世界の変化を描いている点が大きな魅力です。物語の時間が進むことで、かつての主人公が親世代となり、その子どもたちが新たな脅威に立ち向かう構図が生まれます。データの引き継ぎでロビンたちの成長をそのまま次作に持ち込める仕組みも含めて、「シリーズ全体でひとつの物語を見届けている」という感覚を強く味わえる作品群になっています。
技術的なこだわりとシリーズ展開が支える魅力

「黄金の太陽」シリーズは、ゲーム内容だけでなく、発売当時のハード性能を限界まで引き出そうとした作り込みの姿勢も特徴です。「開かれし封印」と「失われし時代」はゲームボーイアドバンス向けに開発され、「任天堂のファン向けに本格RPGを作る」という企画意図のもと、画面表現や音楽、全体の密度に強くこだわっています。その結果、キャメロットの従来作品と比べても制作コストがかかったとされるほどのボリュームとなり、BGMを担当した桜庭統の楽曲も、シリーズを印象づける大きな要素になっています。初代は世界的なミリオンヒットとなり、特に欧米で高い人気を獲得しました。
タイトル名の決定にもこだわりが見られます。当初はカタカナの「ゴールデン デンソル」という案が出されていましたが、任天堂の目に留まり、日本語の「黄金の太陽」に変更されました。この変更によって単なる名称にとどまらず、物語全体に影響が及びました。「黄金の太陽」という言葉自体が作中の重要な用語として扱われ、ストーリーの中で意味を持つ存在として組み込まれています。タイトルと世界観が分離しておらず、ひとつの作品として一体感を持っている点が印象的です。
ニンテンドーDS向けに発売された「漆黒なる夜明け」では、ハードが変わったことで表現の幅がさらに広がりました。キャメロット側は本作でも作り込みを徹底し、同じグラフィックの人物をひとりも用意していないことが語られています。システム面では、シリーズを初めて遊ぶプレイヤーや、過去作の内容を忘れてしまった人に向けて用語辞典が追加され、世界観や用語をゲーム内で振り返りやすくなっています。日本版では漢字にルビを表示する機能や、文字をタッチして読みを確認できる配慮もあり、読みやすさと理解しやすさの両方を意識した設計になっています。
評価面でも、「漆黒なる夜明け」はさまざまなメディアから高いスコアを受けています。グラフィックやパズル要素、戦闘システムなどが好評で、一方で会話シーンやカットシーンの長さ、難易度に関する意見も見られますが、総じてシリーズのファンやRPG好きに向けて「素晴らしい出来」と評されています。日本国内でも、ファミ通のクロスレビューで四十点中三十三点という評価を得ており、安定した評価を受けた作品といえます。
シリーズ展開の面では、「失われし時代」で一度物語が完結した後しばらく新作の発表が途絶えていたものの、「E3 2009」でニンテンドーDS向け続編が発表され、「E3 2010」でサブタイトルが公開されるなど、時間を置いて再び注目を集めました。さらに、二〇二四年一月十七日からはNintendo Switch Onlineの「ゲームボーイアドバンス Nintendo Classics」において、「開かれし封印」と「失われし時代」の両作が配信されています。これにより、当時のプレイヤーだけでなく新しい世代もシリーズに触れやすくなりました。過去作が現在のサービスで遊べるようになっていることは、作品そのものの価値が長く認められている証拠でもあります。
ハードの性能を引き出す技術的な工夫、音楽やグラフィックへの強いこだわり、タイトルと物語の一体感、そして配信サービスによる再評価まで含めて、「黄金の太陽」シリーズは時間を超えて遊ばれ続ける力を持ったRPGだといえます。ゲームとしての面白さだけでなく、作り手の姿勢や長期的な展開も含めて、シリーズ全体の魅力を支える大きな要素になっています。
シリーズの一覧
黄金の太陽 開かれし封印


『黄金の太陽 開かれし封印』は、2001年8月1日にゲームボーイアドバンス向けに発売されたシリーズ第1作です。物語の舞台は霊峰アルファ山のふもとにあるハイディア村。ここには、錬金術の封印を守るソル神殿があり、エレメンタルの灯台を解放するために必要な「エレメントスター」が封印されています。しかし、サテュロスたちによってこの封印が破られ、エレメントスターが奪われてしまいます。
地のエナジストである少年・ロビンは、好奇心からソル神殿に侵入したことで、結果的にサテュロスたちの計画に加担してしまいます。世界の守護者ワイズマンは、錬金術を復活させることが世界の大きな混乱につながるとロビンに伝え、エレメンタル灯台の解放を止めるよう依頼します。ロビンは、その責任を負う形で、幼なじみの火のエナジスト・ジェラルドとともに旅に出ることを決意します。

旅の途中で、彼らは新たな仲間と出会います。風のエナジスト・イワンは、カレイの町の大商人ハメットの養子で、盗まれた「シャーマンの杖」を追っている少年です。ロビンたちに助けられたことをきっかけに行動を共にし、やがてハメット救出も大きな目標となります。水のエナジスト・メアリィはイミル村の出身で、マーキュリー灯台を守る一族の末裔です。同族であるアレクスの裏切りによって灯台が解放されてしまったことから、サテュロスたちの計画を止めるためロビンたちに合流します。
物語は各地の灯台を巡りながら進んでいきますが、『開かれし封印』だけではストーリーは完結しません。物語は2つ目のヴィーナス灯台の事件と、その直後の出来事までが描かれ、続きは次作『失われし時代』へと引き継がれます。ゲームプレイとしては、エナジーを使ったダンジョンの仕掛けや、ジンの収集・クラスチェンジといったシステムが強く印象に残る内容になっており、シリーズの基礎がこの1作で確立されています。
黄金の太陽 失われし時代


『黄金の太陽 失われし時代』は、2002年6月28日にゲームボーイアドバンス向けに発売された第2作で、『開かれし封印』の直後から物語が続きます。ヴィーナス灯台は起動したものの、その過程でサテュロスたちは命を落とします。捕らえられていたガルシア、ジャスミン、シバ、スクレータの4人は解放されますが、ここから物語はロビンではなく地のエナジスト・ガルシアを中心に描かれることになります。
ガルシアはハイディア村出身で、ジャスミンの兄です。3年前の嵐で家族と共に行方不明となり、その際にサテュロスたちに助けられたことで灯台の解放を手伝っていました。とはいえ彼はサテュロスに恩義だけで従っているわけではなく、錬金術を解放することの意味を理解したうえで行動していました。サテュロスたちがヴィーナス灯台で倒れた後も、彼は灯台の解放を続けると宣言し、錬金術の復活が世界を救うと信じて冒険を続けます。そのため、錬金術の解放を止めようとするロビン一行とは立場が真っ向からぶつかることになります。

ガルシアと共に旅をする仲間たちも個性豊かです。火のエナジスト・ジャスミンは、ロビンやジェラルドと幼なじみであり、兄のガルシアと共にサテュロスにさらわれた過去を持ちます。明るく少しわがままな性格で、ロビンへの想いと、ロビンたちと対立している現状の板挟みになる複雑な心境を抱えています。ラリベロの町に空から降ってきた風のエナジスト・シバは、自分の出自を確かめるため、ガルシアたちとの旅路を選びます。水のエナジスト・ピカードは、レムリア王ハイドロに選ばれ、世界の縮小とガイアフォール拡大の調査を命じられた青年で、津波に巻き込まれてマドラに流れついたところをきっかけにガルシアたちと行動を共にするようになります。
彼らを導く学者・スクレータも重要な存在です。錬金術研究の第一人者であり、かつてはバビの支援を受けて幻の国レムリアを探していましたが、ハイディア村訪問中にサテュロスのたくらみに巻き込まれ、ロビンたちとともにエレメントスター強奪に加担してしまいます。その後ジャスミンと共にサテュロスに誘拐され、彼らと行動する中でもロビンたちに助言を続けました。『失われし時代』ではサテュロス死亡後、ガルシア一行に正式に合流し、世界が崩壊へ向かっている現状を理解して灯台の解放に協力します。

一方、敵対側にも深い事情を持つキャラクターが描かれます。サテュロスとメナーディは『開かれし封印』における仇敵として描かれていましたが、その正体は北方のプロクス村の住人であり、錬金術封印による世界崩壊から村を守るために灯台を解放していたことが明かされます。彼らの後を継ぐカーストとアガティオもまたプロクスの民であり、目的のためなら手段を選ばないことから、ガルシアたちとの間でも緊張が生まれます。最終的に彼らはマーズ灯台でワイズマンによってフレイムドラゴンに変えられ、ガルシアたちの前に立ちふさがりますが、戦いの中で力尽き、最後の灯台を託す役割を果たします。
物語の最終局面で、ワイズマンはロビンたちの前に再び姿を現し、灯台の解放に協力し始めた彼らの動きを止めようとします。マーズ灯台では、ロビンの父ドリーやガルシアとジャスミンの両親が3つ首のドラゴンに変えられ、最後の障害として立ちはだかります。スクレータはその正体をすぐに見抜きますが、戦いの末にドラゴンが倒されると、ワイズマンはガルシアたちの力と覚悟を認め、錬金術解放を受け入れます。同時に、アルファ山ではアレクスが「黄金の太陽」現象による絶大な力と永遠の命を手に入れようとしていましたが、ワイズマンによって計画が崩され、彼は「完全」ではなく「ほとんど完全」に近い力と寿命しか得られない結果となります。その後、ワイズマンに挑もうとして失敗し、アルファ山の崩壊に飲み込まれていきます。

道中では、ルンパ村を作った大盗賊ルンパや、レムリア王ハイドロ、バビ、チャンパのオババ、海賊パヤヤームといった多くの人物と出会います。それぞれが世界の崩壊に関する情報を持ち、ガルシアたちの旅を支えたり、時には妨げたりします。世界が縮小しつつある事実は、ルンパが昔旅をした頃の世界地図と現在の世界の違いからも確かめられ、錬金術の封印がもたらした影響の大きさがプレイヤーに伝わる構成になっています。
『失われし時代』は、ロビン側とガルシア側という2つの視点が最終的に交わり、錬金術を巡る「封印するべきか、解放するべきか」というテーマに一つの区切りをつける作品です。1作目からのデータ引き継ぎ要素も活かされ、ジン72種を集めて挑む隠しダンジョンなど、やり込み要素も用意されています。
黄金の太陽 漆黒なる夜明け


『黄金の太陽 漆黒なる夜明け』は、2010年10月28日にニンテンドーDS用ソフトとして発売されたシリーズ第3作です。舞台は『失われし時代』から30年後の世界で、かつて世界を救ったロビンやガルシアたちは「ハイディア戦士」として伝説的な存在になっています。アメリカでは2010年11月29日、ヨーロッパでは同年12月10日に発売されました。
前2作の時点で物語は一度完結した形になっていましたが、開発側ではそれを「序章」に近い位置づけとして見ており、完全な終わりとは考えていなかったとされています。『漆黒なる夜明け』でも世界観やシステムはそのままに、グラフィックやキャラクターデザインがニンテンドーDS向けに作り込まれており、同じ見た目のキャラクターがいないほど細かく作られているといわれています。ただし、この作品単体では物語は完結せず、続きがある構成のまま現在まで続編は発表されていません。
物語の世界は、錬金術の解放によって崩壊の危機から救われ、一見すると活気を取り戻しています。しかし一方で、強大な力を持つ国が他国に攻め入り領土を広げる戦乱が起き、さらに「黄金の太陽」現象以降の天変地異、特に10年周期で発生するエナジーホールの災害など、新たな問題に悩まされています。地形も30年前とは大きく変わり、アルファ山は絶えず噴火を続けているため近づくことすら難しい状態になっています。

ロビンとジェラルドは、エナジーホールの災害を防ぎ、アルファ山を監視するためにゴマ山に住み、そこで家族と暮らしています。そんな中、イワンが開発したアルファ山監視用の「グライダーウィング」がロビンのもとに届けられますが、ジェラルドの息子テリーがイタズラ心から勝手に使って壊してしまいます。グライダーウィングを修理するには伝説の「ロック鳥」の羽が必要であり、それを手に入れるためにロビンとジャスミンの息子ムート、イワンの娘カリス、ジェラルドの息子テリーの3人が旅に出るところから物語が始まります。
主人公ムートは地のエナジストの少年で、外見は『開かれし封印』の頃のロビンにそっくりです。両親であるハイディア戦士を誇りに思っており、その息子としての責任を意識しながら冒険に挑みます。カリスは風のエナジストでイワンの娘、勝ち気で頭の回転も速く、あまりしゃべらないムートと暴走しがちなテリーの代わりにパーティを引っ張る場面が多くなります。テリーは火のエナジストで、父ジェラルドそっくりのやんちゃな性格です。エナジーを安易に使おうとして仲間に注意されることも多く、今回の旅の発端も彼の行動が原因になっています。
旅の途中では、メアリィの息子で水のエナジストのクラウン、アヤタユ国の王子ハルマーニ、モルゴル王ボルテチノの妹ステラ、大海賊パヤヤームの息子レオレオ、ジパン島の巫女ヒミといった新たな仲間が加わります。クラウンはスクレータの弟子として姉ノーブルと世界を巡っていましたが、敵の襲撃をきっかけにムートたちと合流します。ハルマーニはアヤタユ人の母と強力な水のエナジストを父に持つ少年で、アルケミーフォージの起動を通じてムートたちと行動を共にし、のちにメアリィの血を引く一族であることが明らかになります。

ステラはマンビーストと呼ばれる獣人の少女で風のエナジストでもあり、モルゴルの国鳥ロック鳥に関わるイベントを通して重要な役割を果たします。彼女は「闇の装備」を使える数少ない存在であり、物語終盤の鍵を握る人物です。レオレオは『失われし時代』にも登場した海賊パヤヤームの息子で、30年前のことを覚えているほど長寿になった世界の影響を体現しています。ベルフネ城で捕らえられていましたが、ムートたちによって助け出され、その直後に起きたエクリプス現象によるモンスターの襲撃で父を失い、仇を討つためムートたちの旅に加わります。
ジパン島の巫女ヒミは地のエナジストで未来を見通す力を持ちます。ルナタワー(エクリプスタワー)の復活によって昏睡状態になりますが、ムートたちが見つけた秘宝「サードアイ」に選ばれたことで目覚め、エクリプス現象を終わらせる鍵となる「アポロ」と「闇の装備」の存在を明かします。その後、自らもパーティに加わり、終盤のアポロ神殿での決戦へと向かっていく流れになります。
敵側として登場するスペードとハートは、謎の軍隊を率いてハイディア戦士の子どもたちを利用しようとする存在です。のちにツァパランの兵士であり、禁断の「闇のエナジスト」であることが分かりますが、皇帝とは別の思惑で動いていることをうかがわせる描写もあります。さらに、仮面の男エースは丁寧な口調でふざけた言い回しを好む人物で、スクレータやジェラルドとも面識があるように描かれます。その正体は、アポロ神殿での最終局面で『失われし時代』のアレクスであることが明かされます。

ロビンやジェラルド、スクレータ、パヤヤームといった前作の登場人物も、年月を経た姿で再登場します。ロビンやスクレータは「黄金の太陽」現象によって老化が遅くなっており、実年齢よりも若く見える姿で描かれます。ロビンは今もアルファ山の監視に力を注ぎ、ワイズマンを恨む何者かの存在を懸念してゴマ山から離れずにいます。
ゲームシステムの面では、エナジーやクラスの種類、ジンの数がさらに増え、ジンのイラストも1体ごとに細かく描き分けられています。また、初めてシリーズに触れるプレイヤーや、昔遊んだが内容を忘れてしまった人向けに「用語辞典」機能が追加されており、物語中に出てくる専門用語をいつでも確認できます。日本版では漢字にルビを表示できる機能も用意されており、表示を切っていても文字をタッチすると読みが表示されるなど、読みやすさへの配慮がなされています。
評価面では、海外・国内ともに高いスコアを得ており、グラフィックやパズル要素、戦闘システムなどが評価されています。一方で、会話シーンやカットシーンの長さを指摘する声や、難易度がやや低めだとするレビューもあります。それでも、黄金の太陽シリーズのファンやRPG好きに向けて、依然として高く評価される作品となっています。
まとめ

「黄金の太陽」シリーズは、古代文明の遺産である錬金術と、4つのエレメンタルを巡る壮大な物語を中心に、冒険・謎解き・戦略的バトルを丁寧に組み合わせたRPGです。GBAの2部作とDSの続編で構成され、いずれも世界観が共通しており、時代が変わってもエナジストたちの使命は受け継がれていきます。シリーズを通して、プレイヤーは世界の成り立ちや文明の変遷、そして錬金術の封印が抱える矛盾に触れながら、仲間と力を合わせて困難に立ち向かいます。エナジーを使ったフィールドの仕掛けや、ジンの組み合わせで大きく変化する戦略性の高い戦闘システムなど、独自の遊び心地も魅力です。また、各作品のキャラクター達が成長し、世代を超えて物語が紡がれる構成は、シリーズ全体に厚みを与えています。長い時間をかけて練られた世界観と挑戦的なシステムは、今も多くのプレイヤーの記憶に残り続ける作品群となっています。
黄金の太陽シリーズの一覧





















